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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
僕の文章修業
このブログも書き始めてから4年になる。
一日も欠かさなかったことだけは、自分を褒めてあげたい。
おかげで文を書く難しさも十分味わったし、美しい文章を味わうこともできるようになった。

実はぼくはこれまで作文を書いたことがなかった。
小学校で初めて作文の宿題が出た時、夜中までかかって三行も書けていなかった。
業を煮やしたおふくろは、僕から鉛筆を取り上げ、自分ですらすらと書き始めた。
お袋は昔の奈良の女高師の国文科卒。女学校の国語教師もしたことがある。

僕のだらけた文章が、お袋が一言二言手を入れるとぴしっと引き締まっていくのは見事なものだった。
その作文に教師は最高点をつけてくれた。
もうこうなると引っ込みがつかない。
作文の宿題はお袋の仕事になってしまった。

ある時、作文の全国コンクールがあった。
教師は僕を代表に指名してくれた。そして僕をそばに呼び寄せ、 “でもな、お母さんにはあまり子供らしくない表現を使わないように言っておくれ”と耳元で囁いた。
敵は先刻ご承知だったのである。

中学時代は敗戦とその後の学制改革の混乱で作文などの余裕はなかった。
その後は理系そして医学部に進み、幸い作文とは縁のない学生時代で逃げ切った。
あとはアメリカ留学。向こうはすべて秘書が速記をとる。僕がなにかモニャモニャと口述すれば、立派な英文がタイプされて戻ってくる。

帰国してからは、原稿の依頼があれば、速記者をつけることを条件にし、自分で原稿を手書きすることはなかった。
文章が書けないだけでなく、字がお粗末で自分でも書いてから5分もすると読めなくなるからである。

それがワープロの誕生で、僕が打ってもきれいな活字で文章が印刷されてくるのに感激し、必死でパソコンを習い、その練習も兼ねてブログを始めた次第である。

今僕のお手本の一つは元朝日新聞の記者、門田勲が半世紀前に書いた「外国拝見」である。
その一節を御紹介しよう。
新聞の日曜版に連載されたヨーロッパ紀行のパリの終章である。

「前略

以上でわたしのパリ通信は終わりである。
パリを書いた、などと言えるものでは勿論ない。友人たちが調べて来てくれたり、カフェのテラスで聞かしてくれた話を、不細工にただ書きならべただけだ。わたしはフランスの田舎を知らぬ、フランスを知らぬということだろう。

わかるのは、パリに秋が来ることだ。暑かったせいで、今年は街路樹の葉の散るのがはやいそうだ。乾き切った黄色い葉が、舞台のようにかさかさと音をたてて散る。
ホテルに近い夜の歩道で、モーリス・シュヴァリエが、目立たぬ身なりの女と肩を寄せて、何かしんみりと話していた。シャンゼリゼへ聞きに行ったことがある。さかんなアンコールを浴びてはいたが、声は衰えているらしい。シュヴァリエも、もう六十四とかになるそうだ。」(1952年8月 朝日新聞)

どうです、一言も足すことも削ることもできない情感にあるれた名文ではないでしょうか。
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by n_shioya | 2009-04-09 22:56 | コーヒーブレーク | Comments(16)
Commented by 船長 at 2009-04-09 23:59 x
芸当ではなく芸術のような文章が書けたら・・・と思います
Commented by 芙蓉 at 2009-04-10 00:51 x
確かに、名文です!ゾクッときました...♪。

お母様、奈良女高師範でしたか..。さすがは、教育のプロですね(^^ゞ。
そして、耳元で囁いた先生も、ある意味プロですね。
先刻ご承知、微笑ましくて頷いてしまいました。
作文のみならず、絵も同じことがいえるかもしれませんね。
ちょっと手を加えただけでも、先刻お見通しかも(^^ゞ

先生の文章はとっても読みやすく心がこもっていて、
素晴らしいと思います。これからも日々更新、楽しみにしています。
Commented by icelandia at 2009-04-10 01:11
文章というのは、恐ろしいほど人となりが出ますね。特にメーやブログは直筆のクセが見えないため、文章に個性がわかりやすいような気がします。
4年間毎日欠かさず本当にご苦労さまです。100キロマラソン並みの精神力が必用なのではと思います。柔和な人柄がにじみ出てきて、大好きなブログです。毎日有り難く楽しみに読ませていただいています。が、どうぞご無理はなさらないでくださいね。
Commented by ふくだ at 2009-04-10 08:08 x
私も先生の、読む人の興味をそそり且つ読み進みやすい文章のファンです。お母様のくだりは、夏休みの宿題を黙々と仕上げる己を見ているようです・・・(笑)
Commented by 御隠居@横町 at 2009-04-10 09:25 x
先生も文章が達者ですが、どうも作家さんより科学者やエンジニアのほうが文章が達者と感じるんですよねえ。
文芸ファンにこんなこと言うと、
「そりゃ、おまえが芸術がわかってないからだ。科学者やエンジニアの文章がいいったって、わかりやすいってだけだろう?」
と一蹴されてしまいますが。
それにしても昔の学校には素晴らしい先生がいたものですね。
Commented by ゆきこ at 2009-04-10 09:35 x
ブログ4年なのですか? 凄いですね 毎回楽しみですよ!
Commented by グリーンノート at 2009-04-10 12:56 x
ひょんなことからこのブログを発見して以来毎日読ませていただいています。もう日課です。医療関係でもなんでもありませんが、先生のブログは多岐層のファンから読まれているということでもあります。読みやすいというだけではありません、書かれている内容の広さ深さでしょう。楽しみにしています。
Commented by さぼてんの花 at 2009-04-10 13:52 x
先生のブログに引き込まれてしまった一人です
お顔をお写真で拝見しているので、いったいどんな人が書いているの?
と思うバーチャル世界でもなく
甘いも酸いも経験された人生の先輩の、硬軟両刀使いのさじ加減で
本当に楽しみに拝見させてもらってます
いつもありがとうございます
Commented by n_shioya at 2009-04-10 16:56
船長 さん:
と言うことは門田勳はどちら?
Commented by n_shioya at 2009-04-10 16:58
芙蓉さん:
何時もながらごていないなコメント有難うございます。
ブログを見て天国のお袋が、手を出せなくてやきもきしているのではないかと思います。
Commented by n_shioya at 2009-04-10 16:58
icelandiaさん:
これでも当人は楽しんでる面もありますので、ご安心ください。
Commented by n_shioya at 2009-04-10 17:00
ふくださん:
いつもありがとうございます。
今年は別のミニセミナーを企画しておりますので、ご期待のほどを。
Commented by n_shioya at 2009-04-10 17:01
御隠居@横町さん:
昔は教師と学生の交流がありましたね。
よく休みには教師の家に押しかけて行くとか。
奥さんはずいぶんと迷惑されたでしょうが。
Commented by n_shioya at 2009-04-10 17:02
ゆきこ さん:
本当に有難うございます。
今後ともよろしくお願いします。
Commented by n_shioya at 2009-04-10 17:04
グリーンノート さん:
コメント有難うございます。
気が多いと言うか、話題はいくらでもあり、もっと消化してからとも思うのですが、とりあえず気楽に雑多に書いておりますのでご勘弁ください。
Commented by n_shioya at 2009-04-10 17:07
さぼてんの花さん:
有難うございます。
さぼてんの花ほど種類が豊かなものはありません。
どんなお花か、想像をふくらましております。


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