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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
先日富士フィルムの研究所で、「アンチエイジング」と「再生医療」の話をさせていただいた。
当然のことながら、フィルム技術を支えてきた「高分子化学」を、この二つの分野にいかに役立てるかという命題である。 この三つを結び付けるのは、何か落語の三題噺にも聞こえるが、講演の準備をしながら、この三者は意外に関連性があるのに気がついた。 その軸はコラーゲンである。 まず、人間の体全体は、皮膚というフィルムで覆われている。これが損傷を受ければ、感染を防御できず、また体液の漏出も防げない。つまりただちに生命が脅かされる。 勿論、皮膚は高分子フィルムよりはるかに複雑な構造を機能を有しているが、基本的には、この二つのバリア機能である。あ、今一つ、知覚器官でもあるが。 そして20年ほど前、シリコン膜を基材とした人工皮膚が考案された。バイオブレーンという。 それなりに熱傷患者の治療に使われたが、高価なことと、長期の生着が不可能なので、すたれてしまった。 そして最近話題になるのが、再生医療である。これは本人の皮膚の基底層と呼ばれるところにある幹細胞という、いわば表皮細胞のもとの細胞が利用される。具体的には切手大の皮膚から三週間ほどで全身を覆うだけの皮膚シートがつくられる。本人の細胞だから拒絶されることは無い。 これを企業化したのが、ブログにもたびたびご登場いただいた(株)J-tecで、その製品がジェイスである。 この培養皮膚の生着に重要なのがコラーゲンの存在である。 今のは皮膚が欠損を生じた時の話だが、老化した皮膚の若返りはどうか。 これもコラーゲンという高分子が関わっている。 表皮の下にある真皮層は大部分がコラーゲンで、その劣化とひ薄化が皮膚老化の最大原因だ。それを何らかの形で補充するにも、富士フィルムの高分子テクノロジーが応用されて良い。 工学者はいろいろなテクノロジーを開発している。 我々医療側は、この疾患の治療にはこういうものがあればと模索している。 この二つを結びつけたのが医療工学であり、その結果生まれたももの一つが現在脚光を浴びている再生医療だと御理解いただきたい。 だが、その成果がベッドサイトの患者まで還元されるには、まだ遠い道のりがあることは確かだ。
by n_shioya
| 2011-07-28 23:16
| 医療全般
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Comments(2)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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