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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
おなじみのミロのビーナスだが、この両腕がどんな形だったか考えたことはありますか? じつはこれを一生の研究テーマにしたドイツ人の学者がいた。 フルトヴェングラーといって、あの有名な指揮者ではない、確か人類学者か美学者だったと思う。 片手を差し出したり、腕を組ませたり、お盆をささげ持つ形をとらせたり、どれもさまにならなかったという結果を一冊の論文に纏めている。 その理由付けは、ミロのビーナスはあまりにも腕のない現状に見慣れているため、我々の頭の中にはすでに、両手の備わった理想的なビーナス像がインプットされてしまっている そのかたちは、見る人の頭の中しか存在しないが、あまりにも完璧なため。現実の姿で現れると、どれもそぐわない感じになるのではないかという。 じつは美容外科のトラブルの一つに、「ポリサージャリー」というのがある。客観的にはうまくいっても本人が満足せず、何度も手術を繰り返すケースである。 勿論その中には、醜形恐怖症とかパラノイアといった、元来精神病質の患者も含まれるが。 しかし、それだけだったろうか。 僕らは本当に彼女等の悩みに、耳を貸していたのだろうか、 自分でメスを持たなくなり、ある程度過去の手術や患者を客観的に反芻するようになると、もっと奥深い患者の悩みが聞こえてくるような気がする。 例えば、問題は目とか鼻ではなく、唯もっと美しくなりたい。或いはそういわれてみたい。それがかなわぬので、容貌の特定箇所をスケープゴートにして、文句を付けるとか、 叉は、この世にはありえない、頭の中だけの理想像が出来て、それを唯追い求めているとか。丁度フルトヴェングラーがミロのビーナスの欠けた両腕について洞察しているように。 このような悩みに対して、メスはおろか、凡庸な美容外科医がどう対処できるのか、未だ僕は答えが出せないでいる。
by n_shioya
| 2013-01-26 21:59
| 美について
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Comments(2)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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