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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
「詩仙堂にて」
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書院から望む詩仙堂の庭は秋の盛りである。
手前の砂庭には、名物の山茶花が白く輝いている。
いつ来てもここは良い憩いの場だ。
だが、と僕は垣根のむこうを見やりながら従姉妹に声をかけた。
「あのレジノ鉄板はぶち壊しじゃないか。」
彼女はただ微笑んでいる。
抹茶が来た。

詩仙堂。
徳川のはじめ、浅野候に重用された石川丈山が隠遁して作った庵である。
枯山水とはまた違った温かみのある趣で、四季折々の自然は眺める人を楽しませてくれる。
僕が京都を訪れるたびに必ず立ち寄る場所のひとつだ。
此の時も、宝ヶ池の学会場から抜け出し、たまたま京都を訪れていた作家である従姉妹を誘って寂光院へ足を伸ばし、万寿院を訪ねて、ここ詩仙堂にたどり着いたところであった。

先ず庭に出ると、池の向こうは築山で紅葉が鮮やかである。
その築山を中途までのぼり、洛北を一望に収めたとき、昔風情のあったはずの家並みは今、赤、青のレジノ鉄板の屋根で置き換わっており、チョッとばかりショックを受けたのであった。
これが現代の借景か、がっかりした僕は茶菓子を口に運んだ。
椀は黒楽だった。

だが、一掬の茶を口に含んだとき、すっと日常の喧騒は消え去り、京ならではの安らぎが戻ってきた。
この日常から切り離された“虚構の世界”。
いや逆にこここそが“悠久の世界”であり、垣の外はすべて“虚構”とも思えてくるのだった。

これは丈山も同じ思いではなかったろうか。
今は平安な古都も、当時は生臭い戦乱の都であったに違いない。それを垣で仕切って方丈の間に別天地を形成する。
そう、レジノ鉄板が溢れてきた今のご時世だから尚のこと、詩仙堂に存在意義があり、僕も毎度ここに惹かれて足を運ぶのではないか。

この発見に僕は満足し、黒楽の底に漂っていた最後の緑を飲み干すと、従姉妹に声をかけた。
「これでいいんだ」。
なにも言わず彼女はまた、ニッコリと微笑み返した。
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by n_shioya | 2013-02-16 19:58 | コーヒーブレーク | Comments(1)
Commented by HOPE at 2013-02-17 09:51 x
なんてきれいなお写真でしょう!!


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