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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
ステーキを愛した菜食主義者
親父のことを書くのは気が重い。だが、アンチエイジングを説くに当たって、避けては通れない人物の一人である。
百歳まで現役ゴルファーとして活躍し、自分の年以下のスコアで回るいわゆるエイジシュートを三回も達成し、ゴルフ界では多少名が通っていた。
それが、百歳になってもう一度エイジシュートをと頑張りすぎて、体調を崩し、お定まりの認知症を発症、最後は東京にある特別養護老人ホームいわゆる特養のお世話になり、106歳の誕生日を目の前に亡くなった。
健康法に関する本も十冊近く出版し、倒れるまでは講演旅行で全国を走り回っていた。

親父の健康法は、「玄米菜食」と「呼吸法」であった。
呼吸法は別の機会に触れるとして、玄米菜食は徹底したものだった。
砂糖は「毒」だ、肉食などとんでもない。
晩年は魚も追放されて、野菜も松の葉っぱだけとなった。
このような食生活を強いられた子供時代が如何に惨めなものだったか、お分かりいただけるだろうか。
長じて「毒」が如何に美味なものかわかってから、一生かかってでも子供時代のロスを償おうと、体に悪いものばかり食べ続けている僕である。
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だが、親父も無理してるな、本当は甘党で肉も大好きなのに、とはうすうす感じていた。
白寿といわれる99歳の誕生日。お祝いにあるレストランに連れて行った。
マネージャーが聞いた、
「せっかくですから是非おいしいステーキでも。」
「君な、其のステーキが一番体によくない。だが、せっかくのお勧めだ、喰ってやろう。
あ、君、君、ヒレでなくサーロインをな。」
サーロインのほうがもっと体に悪いはず、と言いたいのを僕はぐっとこらえた。

食べ終わったところでまたマネージャーが、
「如何でした?」
「ああ、味はよかったが歯ごたえがなかった。」
マネージャーの目が点になったような記憶がある。
じつは親父はまだ全部自前の歯だったのだ。

或る時特養に入った親父を訪ねた次男がこんなことを伝えてくれた。
「爺さん、毎日何食べてるか知ってる?」
「?」
「肉にしますか、魚にしますかときかれると、必ず、肉を選ぶんだ。それを食べるときのうれしそうな顔。」
僕は落語の蕎麦好きの話を思い出した。
“蕎麦通はタレはごくわずかで食べるのもの、”と頑張っていた男がいまわの時に、“ああ、たっぷりタレをつけて食べたかった、”と洩らしたというネタを。
次男の話しを聞き、親父もこの年になって、ヤット自分自身に気兼ねなく、幸せな食生活を楽しめるようになったのなら、認知症もまんざら捨てたものでないなと、また不届きなことを考えたものである。
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by n_shioya | 2013-03-01 20:41 | 食生活 | Comments(0)


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