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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
俵屋の不思議
俵屋は不思議な宿である。
数十年前、初めて泊まったときからそう思ったが、その後も裏切られた事は無い。
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一見何の変哲もない、京都の町屋だが、一歩足を踏み入れると、別世界が展開する。
といっても古い廊下に、古い日本間そして、庭もただ簡素な植え込みがあるだけの、至極当たり前の日本家屋である。
いささかも贅を尽くしているようには見えないし、奇をてらっているわけでもない、
使用人も、普通の女中さんがいて、番頭さんがいるだけで、何も特別の使用人が特別なサービスするわけでもない。

だが、靴を脱ぎ、古びた木の廊下を渡り、古い日本間に通され、茶菓子を口にし、一服の煎茶をすする頃なぜか心が和み、普段は辛気臭く思える障子や床柱までもが好ましく思えてくる。
そして日ごろ無意識に纏っている「心の鎧」も何時しか溶けて、なんとものどかな気分に包まれる。
いったい何故だろう?
以前、村松友視の「俵屋の不思議」という本が評判になったが、まだ読んでいない。

庭に面したガラス戸の内側は、狭い縁側とたたきになっていて、昔懐かしい草履が用意されている。
縁側に腰を掛け、ガラス戸越に庭の受け込みを眺めながら、この安らぎはなんだろう、と考え込んでしまった。
今われわれの日常から、当たり前、普通のものが消えてきているからだろうか。
いやそれだけではない。
部屋のつくり、調度品、庭の佇まいをじっと心の目で見ると、あることに気がついた。

“すべて、在るべきところに有るべきものがある。反対に余計なものは一切存在しない。”
しかもそういう隙のなさを感じさせることなく、暖かく包み込んでくれる空間の存在。
また、働く人々の気配り。女中さんや番頭さんのサービスも、決して押し付けがましいところはなく、必要なときだけさっと現れて、こちらの気持ちを察しサービスをしてくれる。
そして料理もすばらしい。料亭ではないが、料亭以上である。一品、一品に心のこもった味わいを感ずる。
こんなことは、よい旅館なら当たり前のことかもしれない。ただ、其の当たり前のことも俵屋のレベルになると、芸術的としか言いようがなくなる。
“背後で指揮している作者はだれだろう?”

など考えながら、ガラス戸の向かうに用意されている、白い鼻緒の白木の下駄を見ていると、”あ、これも有るべき物が、あるべき姿で、在るべきところにおかれている“と感じられ、なぜか目頭が熱くなってきた。
“下駄を眺めて涙ぐむ”、これも「俵屋の不思議」の一つかもしれない。
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by n_shioya | 2013-03-14 21:35 | コーヒーブレーク | Comments(0)


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