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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
真夏の夜の夢
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高速湾岸線は今日も料金所からビッチリ渋滞だ。
FMをオンにする。
チャッ、チャッ、チャッ、チャー・・・軽快なタンゴのリズムが流れ出した。
「ただいまのはラ・クンパルシータでした。次はカミニート・・・」とDJの喋りが続く。
最近またダンスがはやっているようだ。映画,「シャル ウィ ダンス?」が火付け役だったようだ。

“でも塩谷さん、アルゼンチン・タンゴはいけません。お品が悪い。タンゴはやはりコンチネンタル・タンゴですわ。どう、このジェラシー。素晴らしいとお思いになりません?
優雅にステップを踏みながらK夫人は言われた。
半世紀前の軽井沢の話である。

その昔、軽井沢が六本木と化するはるか以前。
車はまだ珍しく、自転車がファッションではなく、必需品だった頃。
夏ともなれば霧と落葉松を舞台に若者達の「真夏の夜の夢」が繰り広げられていた。
K夫人はいつも着ている服の色から、一部の人達からは「紫婦人」と呼ばれていた。
そのK夫人には高校に行く一人娘が居た。
明るい朗らかなお嬢さんでスタイルも抜群。膝が曲がらないように子供のときから正座させたことがないというのが母親のご自慢だった。
そして彼女を取り巻く華やかなクラスメートの美女集団があった。
当然のことながら、その周りには野獣が群がった。
昼はテニス、夜はダンス。そこで流れる曲はワルツであり、ブルースであり、コンチネンタル・タンゴであり、当時ジルバなどはご法度だった。

S嬢もその中の一人で、聡明でやさしいが芯はしっかりしていると、野獣どもの評価は高かった。
ある晩、彼女は純白のドレスで現れた。なんと言う生地だったか、当時流行の上等な服地で仕立ててあった。
その日の彼女のとりわけ優雅だったこと。
一緒に何を踊ったかもう覚えていないが、あのちょっとごわごわした生地の手触りは今でもしっかと覚えている。
“塩谷さん、どうお思いになって?”
その晩k夫人は僕に尋ねた。
“Sさんですか。いや、素晴らしい。ステキなお嬢さんですね”。
K夫人の眉がキリット吊り上がったのに気づかず僕は続けた。
“結婚するなら彼女だって、皆の評判ですよ。”
その宵限り、彼女の姿をK夫人の夜会で見ることはなかった。

その後縁あって、彼女は東宮御所の住人となり、愛称のミッチーは全国民の口に上ることになる。
やがて三児の母親として、義父の没後、夫と共に一段と厳しさを増す公務に耐えながら、けなげに立派な家庭を築いてきた。
幸いご主人も理解のある方のようだ。
だが何かの折にふと思う。
あの厚い菊のカーテンの向こうで、今でも夫と手を組んでダンスを踊ることがあるだろうか、アルゼンチンは無理にしても、せめてコンチネンタル・タンゴぐらいは?
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by n_shioya | 2013-04-11 20:01 | コーヒーブレーク | Comments(0)


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