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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
アンカレッジに緊急着陸せよ!
此の話しは前にも書いたような気がするが・・・
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定時にデトロイト空港を飛び立ったノースウェストのジャンボ機が巡航高度に達したとき、突然医者を呼び出す「機内放送」が流れた。
しょうがない、と覚悟を決めてスチューワデスに案内されファーストクラスに行くと、青ざめた顔の若い女の子が毛布に包まって寝かされていた。
脈も血圧もかろうじて正常範囲である。
離陸後まもなく突然に性器出血が起こり、タンポンを詰めて止血を試みたところだという。
今はやっと落ち着いているようだ。
“すぐ戻ろう”、僕はスチューワデスに言った。
スチューワデスは答えた。
“離陸直後に引き返すのは、燃料タンクが満タンのためいささか危険ですが。”
しかもその子は別の問題を抱えていた。

日本に留学中のアメリカの女の子だが、夏休みでデトロイトの実家に戻っている間に、家族に内緒で妊娠中絶の手術を受けた。
術後日も浅く、まだ出血の恐れがあるのでフライトを延期するよう医師に言われたが、新学期を明日に控え、学校に戻らないと家族にばれるので無理して予定の便に乗った以上、絶対デトロイトには戻れないと泣きながら懇願する。

スチューワデスの案内で僕はコックピットに入った。
パイロットはチャートを広げ、航路を説明してくれた。
アンカレッジまではカナダの海岸沿いに飛ぶので、いざとなればいつでも緊急着陸はできる。だが、できれば設備の点でアンカレジまでは飛びたい、という。
だがその先は、太平洋の上だ。再出血したら、お手上げである。
僕たちはともかくアンカレッジを目指すことで合意した。
女の子の説得はスチューワデスに任せた。

アンカレッジの上空に来ると,機長はこれから「ダンピング」を始めますとアナウンスした。
安全のため、着陸前に燃料タンクを空にする必要があるという。実はその為に主翼の両端に燃料の吐き出し口が設けられているのをその時初めて知った。
ジャンボ機は緩やかに旋回しながら、霧のように空中に燃料を散布して行く。
やがて無事着陸して、患者を救急車に搬送し、再給油して2時間後にジャンボは離陸した。

ノースウェストの成田便は、東南アジア各地への乗り継ぎ便が成田で待っている。その大部分に間に合わず、乗客は成田で一泊を余儀なくされ、そのホテル代は航行会社の負担となる。
これほどの大事(おおごと)と知っていたら、アレほど気軽に機長に緊急着陸を命ずることができたろうか、改めて背筋がぞっとなった。

ところでこの苦悩の決断に対する医師への謝礼は、其の時もノースウェストからの赤ワイン一本だった。
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by n_shioya | 2013-05-24 21:47 | コーヒーブレーク | Comments(0)


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