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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
繰り返し述べたように、僕はこれまで“心の悩みを癒すためにメスを握ってきた”つもりである。
しかし本当に、癒しになったのだろうか。 いつも成功したと思うほどうぬぼれてはいないし、いつも失敗だったとも思いたくない。 自分でもうまくいったと思い、患者さんにも満足してもらったという、確かな手応えをつかんだこともある。その反面、不満な患者にののしられたこともないではないのだが、ほとんどの場合は、感謝はされても本当に満足してくれたのかしら、と不安なことが多い。 確かによくはなった。しかし完璧と言うことはあり得ない。よくなった分より、至らぬ分にさいなまれるのが形成外科医ではなかろうか。そして患者さんの本音は? しかし、この道を選んだことに悔いはない。又、生まれ変わっても同じ道を選ぶだろう。 そして、今ならこうもできたろう、いやあれなら完ぺきなのだがと、未練はつきない。 だがそうして形成外科医をやり直しても、やはり最後には足らざる部分にこだわるのではないだろうか。それが形成外科医の性(さが)というものだから。 こうして僕は形成外科医として、ためらいを感じながらも、「形の美」を肯定し、追求してきた。 だがいつも心にかかっていたのは、あのイギリスの女流作家、ジョージ・エリオットの言葉である。 十九世紀の女流作家ジョージ・エリオットは「ロモラ」、「サイラス・マーナー」などの名作で知られているが、その類い希な知性と人間的な魅力には、およそふさわしからぬ容貌の持ち主であったという。 そのため深くつきあった男性と、同棲は続けても結婚はしてもらえなかった。 “結婚したいのは山々だが、その顔では”、とまではっきり言われたという。 彼女と親しかった作家のヘンリー・ジェームスは、父親にこう書いている。 「彼女はとてつもなく醜い。額は狭く、目は鈍く灰色で、鼻は垂れ鼻、口は馬鹿でかい・・・・ だが、その醜い衣のうちには素晴らしい美がひそんでいて、瞬時に人の心を虜にしてしまう。私もその囚われ人の一人です。」 そのエリオット自身は出世作「アダム・ビード」のなかで、こう言っている。 「すべての美しい形に栄えあれ。男も女もそして子供にも、美をまとわせよう。だが、今ひとつの美も忘れないようにしよう。それは見た目の美しさでなく、人間の心の奥に潜む感性の美を。」 これを僕たちの仕事に当てはめるとこう言うことになるだろう。 “手術によって顔かたちを整えるのも結構でしょう、それでコンプレックスの解消になるならば。でも外見だけの幸せにとどまらないでください。人間の心はもっともっと広く奥深いものですから。”
by n_shioya
| 2013-09-02 19:53
| 美について
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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