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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
悪魔の飽食
先日一族郎党を率いて成城の、とあるすし屋に行った。
育ち盛りの孫達の食べっぷりはまことに頼もしい。
この店はまことに良心的で、カウンター席で好きなだけつまんでも、あまり懐が痛まない。
僕は早々に降参して、汁を頼んだ。ここのあら汁はお椀がおおきく具がたっぷりなので気に入っている。
丹念に身をほじって骨までしゃぶっていると、孫の一人が “それ、ダシじゃないの”と怪訝そうである。よほど行儀が悪いと思ったのだろう。
“そうだ君等はなあ、ひもじい思いをしたことがないからなあ。”
と、皆が白けるのを承知で、戦時中の食糧難、いや「飢え死に寸前」の話を始めた。
悪魔の飽食_b0084241_1920448.jpg

戦争末期、もう米などまともな食糧はない。ドブのわきの雑草まで食べて生き延びた時代である。さなぎの粉など食わされたこともある。
大豆が配給になればそれだけで食いつなぐ。一粒一粒数えながら口の中でゆっくりと噛んで長持ちさせる。
ある時どうした手づるでか、魚が一匹手に入った。そのころのしきたりで、このような場合、年長者のお爺さんだけが口にできる。孫の僕はその前にじっと座り、爺さんの食べ残した魚の骨を夢中でしゃぶった、という話である。

よく我々世代は、駅弁のふたについた飯粒から食べ始めるとからかわれるが、いまでも出されたものはただの一粒も残せない。だからメタボのコントロールが難しい、と言い訳するつもりはないが。
それにしても今は無駄が多い。デパートの地下に閉店間際に行くと、売れ残った食品が山積みになっている。値下げしてもそうは売れてないようだ。あの残りは、衛生上ほとんど破棄されるという。
その間にも世界のどこかでは、子供たちがどんどん飢え死にをしていくというのに。
その一方では、肥満を気にして、吸収阻害剤を飲んだり、脂肪吸引をしたり、挙句には腸を切除、バイパスして消化不良で対処しようとする。あさましい限りだ。「悪魔の飽食」とはこのことだろう。

「肥満対策」は簡単ですよ。カロリー制限をすればよい。しかも最近の研究では長寿につながるという。
こんないいことはないのに、それ守れないのが人間である、少なくも僕自身は。
そこでこう考えた。
ともかく実行可能な奴だけでグループを作り、腹八分を守り、摂取量を2,3割減らす。その浮いた分をお金に換算し、それを基金とし、アフリカでもアジアでも食糧危機のあるところを、ささやかながら援助する。
つまり自分のためだけでなく、「人助け」をモチベーションにする。

“一石二鳥のいいアイデアじゃない?”
僕はカロリー・リストリクション(CR)研究の重鎮に其のアイデアを伝えた。
“ダメ、ダメ。CRはそんな甘いもんじゃない。あのメニューは普通食よりもっともっと金がかかるんだ”と会長は冷たい。
駄目だなあ、そんな考えでは。と僕は思った。
だからアンチエイジングは何時までも胡散臭く思われてしまうのではないかと。
by n_shioya | 2013-10-21 19:21 | アンチエイジング | Comments(0)


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