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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
「アヤメ」ヘッセのメルヘン
ある年の夕暮れ。
彼女と一緒に僕は、高層ホテルの一室の窓際のスツールに腰掛けて、眼下に広がるパリの夜景を眺めていた。
パリは高さ制限が厳しく、ベージュのレンガ造りの家並みが頭をきれいにそろえて立ち並び、街に落ち着きを与えている。
彼方にかすんで見えるのはモンマルトル。丸いドームはサクレ・クールだろう。
我々はもう一人の女友達が会議を終えてディナーに迎えに来るのを待っていた。
会議が長引いているらしい。もう約束の時間をとうに過ぎている。
“どう、これでも読んでいたら。”
ぼくは彼女に手元にあった文庫本を手渡した。
ヘッセの「メルヘン」。
そのなかで“これが僕のお気に入り”と言って開いて見せたのが「イリス」の物語である。
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“主人公のアンゼルムは幼少時代、何時も庭に咲く草花や虫たちと戯れていた。中でも母親の最も愛するイリス(アヤメ)に魅せられていた。
それは少年にとって、どんな花よりも大切であり、「一切のものの比喩」であった。
だが、ある年の春、すべての蝶や花たちが神秘な輝きを失った。
そして青年アンゼルムは新しく始まった人生にがむしゃらに突進した。「比喩の世界は吹き消され、忘れられた。」
やがて彼は学問の道を歩み始め、教授となり学生の尊敬を集める。
だが、突然彼はそれまでの生活を空しく感じるようになる。
そのとき彼は友人の妹に出会う。その名はイリスだった。
その物静かな、しかい風変わりな女性に彼はひかれ、やがて彼は彼女に結婚を申し込む。
彼女はだが一つ、注文をつける。
「・・・私は多くのものはなくてもやっていけます。しかし一つのものだけはどうしても欠かすことはできません。それは心の中の音楽です。私がある男の人と一緒に暮らすとしたら、それは、その人の心の中の音楽が私の音楽と十分に調和するような人でなければなりません。それはその人の心の中の音楽が私の音楽と十分に微妙に調和するような人でなければなりません。またその人自身の音楽が純粋であり、私の音楽とよく共鳴することが、その人の唯一の欲望でなければなりません。あなたにそれができますか、アンゼルムさん?」
アンゼルムは面食らって押し黙った。
そこで彼女は一つの課題を出す。
「あなたは私の名を口に出すごとに、かつてあなたにとって大切であり神聖であったけれど、忘れてしまったあることを思い出すような気がするとたびたびおっしゃいましたね。
お願いします。さあ、行って私の名前を聞いて思い出させるものを、記憶の中に見出してごらんなさい。あなたがそれを再び見いだした日に、私はあなたの妻として、どこへでもあなたのお望みのところへ一緒に参ります。」
困惑したアンゼルムは、彼女に送り出されて課題を解く放浪の旅へ出かける、すべてを捨てて。・・・・・・・”

“私にはさっぱり分からない、”読み終えた彼女は絶望的な目で僕を見上げた。
“そう、でも女性と言うものは意識せずとも似たような注文をもつものでは?”と僕は言いかけた。
そのときノックして戸が開いた。
“お待たせ!”と元気よく入ってきた女友達は言った。
“あら、ヘッセね。私大好き。なに難しいですって。じゃゆっくりお食事しながらみんなでお話しましょう。”
そして三人でホテルを後にして、女友達のお勧めのシーフードレストランへと向かった。
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by n_shioya | 2013-12-14 18:11 | コーヒーブレーク | Comments(0)


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