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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
カラマゾフの兄弟
テレビで不思議な現象が報告されていた。
カラマゾフの兄弟”の新訳がヒットして、40万部も売れているそうだ。
喜ばしいことである。

だが活字離れが叫ばれているとき、何故またカラマゾフなのだろう。

かつての教養主義では、ドストエフスキートルストイ、ゲーテ、マンなどと並んで、必読書だった。
罪と罰のラスコリニコフ、白痴のムイシュキンは、ちょうど今の子供たちにとってテレビのバーチャルなキャラクターがリアルである以上に、身近な存在であった。

近着のニューズウィークだと、かの地ではトルストイの“戦争と平和”の新約が話題を呼んでいるという。
あの大部を本当にみな読んでるのか、といぶかしくもなるが、読まれた方はお分かりのように、いったん手にすると、波乱万丈の壮大な物語で息をつく暇もない。
そして、歴史には厳然たる流れがあって、ヒーローもアンチヒーローもただそれぞれが、誰かがやるべき役をあてがわれているに過ぎない、というのがトルストイの歴史観だったように思う。

ところで“カラマゾフの兄弟”を耳にすると、僕はある関西の老舗の大病院を思い出す。
何代目かは忘れたが、僕の高校時代の同級生が院長のときにその病院は内紛で崩壊寸前となり、某大学にのっとられてしまった。
大家族で兄弟はみな医者で、友人は次男か三男だったと思う。
まだごたごたが始まる前、病院が隆盛を誇っていた頃、病院と家族の歴史を解き明かしてくれた奥さんに、“まるで「楡家の人々ですね”というと、彼女曰く“楡家ならいいけどカラマゾフの兄弟ですよ”といわれ、みなで大笑いしたことがる。
病院が傾き始めたのはその後まもなくのことであった。

“やはり最近の若者も、アニメやコミックではあきたらくなったのですかね。”
今のカラマゾフブームについて、テレビのコメンテーターが述べていた。

人間の業(ごう)を、執拗に掘り下げるのがドストエフスキーの常である。
能天気に見える若者でも、人である以上からは逃れられない。
その不安を日頃は白痴番組でごまかしていても、ある日突然深淵を覗いてしまう。そして救いを模索するとき、ドストエフスキーが待ち構えている、なんてのは少し出来すぎた話ですかね。
by n_shioya | 2007-10-15 22:53 | QOL | Comments(2)
Commented at 2007-10-16 01:34 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by n_shioya at 2007-10-16 15:55
僕も先生のコメントを楽しみに読ませていただいてます。


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