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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
アメリカ生活で失ったもの
今でこそ、書類をホッチキスでピシッと留めるのに違和感はおぼえなくなったが、留学前、米軍病院でインターンをしていた頃、秘書たちが手紙や書類を無造作にホッチキスで、パシ、パシ留めるのを見てショックを覚えたものである。

それまでの感覚では、たとえどんな紙でも一枚、一枚が大切な存在であった。
クリップで整理するのは許される。だがそれに無造作に機械で穴を開け、針金で締め付けるというのは、紙だけで無くそこに記されたものに対する冒涜のように感じられたのである。
だが、時間の節約と、散逸を防止する点では合理的である。
アメリカ生活の間に、合理性に負けてどれほどナケナシの繊細さを失ったことか、今でもホッチキスで紙を留めるたびに、大げさに言えば自分の気持ちにホッチキスが食い入るような気がする。

インターンを終えて、フルブライト留学生として彼の地の生活を始めるなり、直ちに巻き込まれたアメリカ流の分秒を争う世界に、息つくまもなく一瞬、一瞬をこなして、ここまできてしまったような気がする。
今改めて、当初感じた違和感を反芻してみると・・・

黒か白かしか存在しないアメリカ。
その中間のグレーのコーナーを探してうろついたのも、はじめの数ヶ月だけであった。
やがて僕も、目の前に現れた人とはすぐ親しくなり、去っればすぐ記憶から飛び去るアメリカ流の人付き合いを身につけるようになった。

会話の中身もそうである。イエスかノーか、それしかない。も、とか、なんとなく、とかいったどちらともいえない曖昧さの居場所は無い。
コーヒーにしてもコーヒーショップはひたすらコーヒーを飲むという目的だけの場所で、カフェといったような文化的な場所は、グリニッチビレッジにでも行かねば見つからなかった。ヒッピー族の台頭以来、この点は多少変わったが。

以来50年。僕は今やっと、失われた心のひだを取り戻そうともがいている、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」を道案内にしながら。

彼はこう書いている。
「われわれ東洋人は何でもないところに陰翳を生ぜしめて、美を創造するのである。(中略)美は物体にあるのではなく、物体と物体の作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。(中略)陰翳の作用を離れて美はないと思う。」
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by n_shioya | 2008-03-05 21:52 | コーヒーブレーク | Comments(2)
Commented by pyu at 2008-03-05 23:14 x
先生、こんばんは。
ホッチキスが「冒涜」とは 繊細な方ですね。
私も毎日 ホッチキスを使っていますが 違和感を感じたことはなかったです。
でも ずいぶん前のテレビで 政治家さんのパーティの受付で
お名前の紙とお札をホッチキス止めしているのを見て、
「それはないやろう!」と思ったことはあります。(多分金額が決まっていないのでしょうね。確かに 合理的ではありますが・・) 
先生の紙への感覚も こんな感じでしょうか。

下のアドバイスもありがとうございます。
そして 診察に対する考え方、なるほどなぁと思いました。
はれあがる目を見る日が 怖いような 楽しみなような・・・
また 拝見しにきます。ありがとうございました。
Commented at 2008-03-06 02:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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