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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
ヒース、へザーいやエリカ
ヒース、へザーいやエリカ_b0084241_16412148.gif配偶者の誕生祝に親しい友人から大きなヒースの花束が届けられ、リビングに薄紅のヒースの小花の群れが満天の星のように溢れている。
まるで茜色に染まったヨークシャの丘が目の前に広がるようである。

嵐が丘」ではこの「ヒース」がいわば主役でもあるが、へザー、エリカとも呼ばれ、女性の名前にも使われている。その中でも僕はエリカという呼び名が好きだ。
“貴方がヒースにこだわるのは、「嵐が丘」というより、エリカという名前のせいかもね。”と勘のいい配偶者は言う。
“そう”。
でも戦前、小学生の頃、エリカという年上のドイツ娘(メッチェン)が身辺にいたことは配偶者には話してない。
それは日本中がドイツに、ヒットラーに幻惑されていた頃のことだ。

数年前のある夕方、ヒースだけでなく、西の空も茜色に染まった頃、ヨークシャの山並みを目指し、僕はハワースに向けて車を走らせていた。
金沢医大の塚田教授夫妻ブロンテ姉妹の故郷をお見せしたかったのである。
一般公開されているブロンテ姉妹の牧師館にたどり着いたときは、もう閉館時間だった。
いったん閉鎖された鉄格子を、このために日本から来たのだからと無理を言ってあけてもらい、早足で一巡した。

訪ねた方ならご存知だろうが、あの牧師館で驚かされることがいくつかある。
まず、ベッドの狭いこと。ワーヅワースのダブ・コッテージでも感じたが、どうも半座位で寝る習慣だったのかもしれない。
また、展示されているシャーロット・ブロンテの靴の小ささにもおどこかされる。まさか、纏足をしたわけでは無かろうに。
次は裏庭の墓場である。墓碑銘をよく見ると、小児が多い。当時は下水も無く、衛生環境は劣悪で、いったん疫病が発生すると、まず子供が犠牲になったという。
そして最後に窓から見る風景だ。そこからは見渡す限り、ヨークシャ・ムアが広がりを見せている。ただそれだけである。姉妹はここに閉じこもり、ひたすらこの光景を眺めていたはずである。そのことがかえって、姉妹の想像の羽を伸ばして、ジェーン・エア、嵐が丘などの傑作の原動力になったのかもしれない。

見学を終えてわれわれは村のブに入りエールを頼んだ。
ブラックボア(黒猪)といって、姉妹の弟、ブランウェルが飲んだくれたとされる酒場である・・・

回想から醒めて改めてリビングのヒースの盛り花を眺める。
春一番はもう過ぎたが、外は今日も風が強い。
ヒューヒューと吹く風の音に混じって、ヒースクリッフの叫びが聞こえるのは僕の空耳だろうか。
by n_shioya | 2008-03-07 21:49 | コーヒーブレーク | Comments(4)
Commented by 山路純平 at 2008-03-08 05:09 x
塩谷先生へ

お話しの通りですよね。

さすが、アーティスト塩谷信幸さん。


Commented by 芙蓉 at 2008-03-08 09:04 x
先生、奥様のお誕生日おめでとうございます。

赤、オレンジ、黄色、サーモン、薄紅...、
さまざまな色で楽しませてくれるヒース、そのような思い出が..。
リビングに溢れるヒースの花の群れ、
ヨークシャの丘に、「パッチワークキルト」のように植えられた、
「ヒースガーデン」を連想させます。
素敵です。

さりげなく語られる奥様のセリフに、
私はいつもいつも唸っております。

Commented by Doc.K at 2008-03-08 12:02 x
今日のブログ 牧歌的で、幻想的でとても素敵ですね。時に先鋭的で、時に耽美的で、また時に牧歌的に綴られる先生のブログは本当に敬服いたします。 「陰翳礼讃」、ここから知りました。私は「痴人の愛」だけだったのです。 アーティスト塩谷信幸先生、いい呼び名ですね。
Commented by n_shioya at 2008-03-08 22:54
山路さん、芙蓉さん:
コメント有難うございます。
Doc.Kさん;
実は僕も痴人の愛はおきにいりです。やはりマゾは耽美の極値ですね。


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