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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
ホテル アルゴンキン
戸口に山高帽を被ったドアマンが居なければ,これがホテルだとは誰も気がつかないだろう.
五番街とアメリカ街の間,44丁目でビルの谷間に窮屈をそうに立っている古ぼけた石造りの二十階建ての館は,よく見るとなるほど玄関の庇にホテル・アルゴンキンと印されている.
“アルゴンキンとゴンにアクセントをつけてタクシーの運ちゃんに言わないと通じませんよ”,とここを定宿にしている従兄弟で演出家の福田陽一郎に言われたのをおもいだした.

世界の都ニューヨークだ.ホテルはそれこそ星の数程あろう.
まずウォールドルフ・アストリヤ.それより更に格式の高いセンと・レジス.その他,ペニンシュラ,エセックス・ハウス、カーライルなど,あまり我が国ではしられていない高級ホテルがセントラル・パークを取り囲むように林立している.
その中でこのアルゴンキンは所謂高級ホテルではないが,いささかユニークなホテルとして知られている.

1902年の創業以来,雑誌ニューヨーカーの編集者の溜まりとして,又著名な作家や劇作家達の常宿として,洒落ていて暖かみのある,ホテルというよりは日本語の旗籠屋に近いイメージのものとして人気を保ってきた.

そして今、従兄弟の自伝を読みながら、彼の勧めで20年も前にアルゴンキンを始めて訪れたときののことを思いかえしているのだ。
そのときはまだ大学生だった長女が、夏の休暇で一緒だった。

タクシーから降り立った僕は、娘を促して,ごつい木の扉を押し開けた. 中はほの暗く,使い込まれた時代物の家具がしっとり落ち着いた感じを出して,ホテルのロビーというよりは,古い館の居間を感じさせる.
右手の奥の小さなカウンターがフロントで,そこでチェックインして部屋の鍵を受け取った.
エレベーターも時代物で,ボーイが丸い手回しのハンドルをぐるりとまわすとギー,ガタンと動きだす.
部屋もなかなかいい感じだ.
骨董品のような家具やスタンド.三つの中一つは点かない電球.暑くもないのにかかりっぱなしのクーラー. だが不思議と安らぐ感じはなんと表現したらいいか.
“あ素敵!丁度お祖母ちゃまのお持てなしって感じ.それもイギリスの田舎家ってとこかな.”
娘の言葉がピッタリだった.

このホテルの今一つの魅力はブロードウェイのすぐ傍にあることだ. 隣がタイムス・スクェアでその先はもう劇場街.
キャッツ,コーラスライン,スターライトエクスプレス.ともかく40軒を越す芝居小屋がタイムス・スクェアの回りに犇めいているが,皆歩いて行ける距離だ.
お目当てはオペラ座の怪人だったが,勿論半年先まで売り切れ,当日売りなどとんでもありません.とフロントで言われ,
“ じゃ,娘よ.42 ストリートにするか?”
“ オッケー,
という訳でゆっくり昼寝をとってから,夜のブロードウェイに繰り出した.

最近日本でも公演があったから,筋は皆さん御承知でしょう.
田舎からスターを夢見てブロードウェイに出で来た女の子が,努力とツキでやっとトップの座を射止めると言う,まことにアメリカ人好みのサクセス・ストーリーだ.
主役は勿論上手だが,その他大勢の粒揃いの事.
全員のタップで始まる幕開けの稽古場のシーンから,唯もうそのド迫力に圧倒されっぱなしだった.
うーん,これじゃ一寸まだ日本では無理ね.と言うのがその頃ダンスに凝っていた娘の感想だった.

翌朝の朝飯はロビーの奥の明るいダイニング・ルームである.
白い壁にロココ調の赤い椅子が可愛らしい.
中央のテーブルには出勤前のビジネスマンが二三人.年寄り夫婦が一組壁際の席に.そして部屋の片隅でキャリアウーマンらしき美人が,カフェオレとクロワッサンを前にして書き物をしている.
自分でもカフェ・オレとクロワッサンを頼みながら娘が言った. “若い女が一人で朝飯を食べていて,サマになるホテルは珍しいわね.”

以来アルゴンキンは僕にも定宿となった。
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by n_shioya | 2008-05-26 23:06 | コーヒーブレーク | Comments(5)
Commented at 2008-05-27 12:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-05-28 20:24 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by n_shioya at 2008-05-29 21:13
山路さん:
人生、遊びが必要ですね。
Commented by n_shioya at 2008-05-29 21:14
匿名希望さん:
どんな逆境も永続するものではないと思って、人生を楽しみましょう。
Commented at 2008-06-01 16:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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