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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
ヨークは日本の京都に匹敵するイギリスの古都である。
ロンドンから北へ300キロ。東は英国第三の港ハルを擁し、西にはブロンテ姉妹の故郷ヨークシャー・ムアを控えている。 市街地の直径はわずか1キロ。ぐるりをローマ時代から作りかえられてきた城壁が囲んでいる。 ヨークが誇るものは三つある。 まずヨーク大聖堂。英国最大のゴシック建築。 次いで世界最高のランクと言われるヨーク国立鉄道博物館。 そして我々に関係の深い医療品企業スミスアンドネフュー社。 10数年前、そのスミスアンドネフュー社の招きで、僕を含め6名の医師がヨークを訪れた。当時同社が力を入れていた「湿潤療法」について学ぶためである。 研究所で一日、「湿潤療法」のレクチャーを受け、研究室の見学をすませたあと、研究部長の案内で、市内観光に出た。 先ほどの二つの名物を見物し、さらにバイキングの博物館にも敬意を表し、最後はショッピングストリート、かの「シャンブル通り」を散策する。 狭い通りの両側に骨董屋、古書店、洋服屋など古いお店が、通行人に覆いかぶさるようにひしめいている。京都の古い町並み、とりわけ清水の安寧坂に通ずる風情がある。 “喉が渇いたでしょう”と部長が我々を誘ってくれたのが、やはりヨークの名物老舗のベティズ・ティーハウスだった。 当店オリジナルのブレンドの紅茶をゆっくりと味わっていると、また部長がいう。“夕食の後にゴースト・ツアーはいかがですか?” “はあ?” “いやなんせここは古い都なので、過去の亡霊に満ち満ちているんですよ。それに我々は芝居がかったことが好きなもんで”と言われる。 夜八時、ツアーは市の広場の一角から始まった。 とんがり帽子で黒の装束の男があらわれ、まず一人ずつ、5ポンド札を巻き上げられる。ツアーガイドである。 この館では16世紀に奥方が毒殺されました、という口上とともにバルコニーに奥方の亡霊と思しき姿が現れ、恨み事を綿々と訴える。 と向かいの角から血みどろの男が現れ、こちらに向かってくる。何世紀か前に暗殺されたなんとか公の亡霊だと、まじめな顔でガイドは説明する。 そのような演出が延々と続き、歩き疲れ、体も冷え、腹もすいたところで、とあるタバーンに入り、これも当地方名物のヨークシャ・プディングにありついて、ツアーは終了。 観光も楽しかったが、目的としたスミスアンドネフュー研究所訪問は十分にその成果を上げた。 イギリスではじまった革命的な創傷治療法「湿潤療法」がわが国で普及し始めたのは、この旅行がきっかけになったからである。
by n_shioya
| 2009-07-12 23:24
| コーヒーブレーク
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Comments(4)
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だんぷ
at 2009-07-13 00:22
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そんな裏話があったとは…
湿潤療法を取り入れなければ化けて出るぞ~ などと言われたわけではないですよね(笑) それにしても10年以上も前のお話だなんて 発想の転換が一般化するのってなんて時間がかかるのでしょう 一般にはまだまだ始まったばかりですもんね
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アヤメ
at 2009-07-13 07:15
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ありがとうございます。私は はい!元気です。インターン先も決まり、後は博士論文と論文のディフェンスと口答試験とワシントン州の試験とナショナルイグザムが残っていますが、一つ一つこなしていきます!8月にノビとNYで会う約束をしました。楽しみ~!11月に日本の大学で特別講義に招聘されていますので 一時帰国するかも知れません。毎日 毎日 治療と勉強 勉強です。でも最近 恋をしています!なんと言っても恋が一番の若返り方ではないのでしょうか?あははは!
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n_shioya at 2009-07-14 10:02
だんぷ さん:
湿潤療法もここへきてだいぶ浸透したのもお化けのおかげというわけですかね。
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n_shioya at 2009-07-14 10:03
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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