|
NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
戦後のハリウッドの人気男優の一人で、モンゴメリー・クリフトというのを覚えておられるだろうか。
「日のあたる場所」「私は告白する」などの名作では、影のある男を見事に演じている。美男であるだけでなく、演技も優れた僕のお気に入りの俳優の一人だった。 その、愛称“モンティ”が自動車事故にあったが、何回かの顔面の形成手術でほとんど傷跡がわからぬくらい恢復した、多少の筋肉のマヒは残ったが。 だが僕が気になったのは、なにか表情のぎこちなさと言うか、不自然さが残ったことである。 勿論筋肉マヒが一つの要因であるには違いない。ただ、なにか顔全体がしっくりしていない。 その後いくつかの作品に出演し、将来が期待されたが、アレルギーと大腸炎などの疾患に悩まされ、46歳で生涯をとじた。 先週の美容外科の学会に出席し、数々の顔の美容手術の見事な術前、術後の写真を見ながら、僕はふと、モンティのことを思い出したのである。 確かに手術できれいに若返っているのがほとんどである、もちろん中には術前術後の写真を入れ替えてもわからないだろうと言いたいような結果もないではなかったが。 ただ、その若返ったはずの顔に何か違和感を覚えることが多かったのだ。 どう言ったらよいだろうか?術前の顔の方が何か自然で生き生きとしている、とまで言ったら言い過ぎだろうか。 この差はなんだろう。 あれこれと思いめぐらし、一つの言葉に遭遇した。 それは「調和」である。 持って生まれた顔にメスを入れた瞬間に、われわれは自然のバランスを崩してしまうのではないか。たとえそれが一部であっても、また客観的には改善されていても。 人の顔は不思議なものである。ブスはブスなりに「調和」を保っていると言ったら叱られるだろうか。 だが、魅力のおおきな要素が「調和」にあるとしたら、美容外科とはいったい何のためにあるのだろうか。 いま一つの不思議な点は、笑っても泣いてもその人の顔として認識できることである。 あれだけ筋肉が動き、しわが寄ってもその人の顔の特性は失われない。これも表情の変化の中でも、一つの「調和」を保っているからではなかろうか。 いまさら言うのもはばかられるが、どうも我々美容外科医は、あまりにも無造作に顔にメスを入れてきたような気がする。
by n_shioya
| 2009-09-29 23:21
| 美について
|
Comments(8)
Commented
by
ミカロ
at 2009-09-30 00:08
x
「日のあたる場所」を幼い時に見て「やるせなさ」というはじめての感情を抱いたことを思いだしました。調和…。ブスはブスなりに、生きる術を身につけられるのに。TVのビューティーコロシアムなどで、昨日までのブスから脱却し美を手に入れた女性であっても、ブスだった昨日までの仕草によって不調和を際立たせてしまう。見た目も、中身も重要で、そのバランスこそが個性なのではないのでしょうか。世の中全ての人が平らな美を得た時に、何が人間の価値を左右するのかが「日のあたる場所」に浮き彫りにされるはず!
0
Commented
by
ぴよこ
at 2009-09-30 07:52
x
同窓会でどんなに皺、たるみ、禿、白髪になっていようとも、表情から、たちまちタイムマシーンで昔に戻ってしまいます。その時、皮膚が張っていることがどれほどの価値か。。考えてしまいますね。
確かに親から授かった体や顔は運命というものですから、大事に引き継いでいくものでしょう。事故や病気でメスを入れることはあっても、自然治癒が基本ではないでしょうか。医師は科学の力で人間に備わっている治癒力を適切にサポートしていくことが本来の役割だと思います。といっても、すぐ痛みが取れることを私たちは望みますが・・・。先生のように、経験を積み、患者と医師がどう向き合うかを、真剣に考えていただく医師が増えてもらいたいものです。
Commented
by
n_shioya at 2009-09-30 22:05
Commented
by
n_shioya at 2009-09-30 22:08
Commented
by
n_shioya at 2009-09-30 22:14
jupiter さん:
確かに治るのは本人の治癒力です。 われわれはそれを最低邪魔しない、出来ればサポートをするのが役目と思います。 だが、やはりさらにそれを促進できないかと考えるのも、人情です。 それで医療も進歩するが、あまり欲張ると副作用という形でしっぺ返しを食らう。 こうして試行錯誤を続けながら、少しづつでも進歩していければと思っています。
Commented
by
zona14 at 2009-10-02 01:29
カメラマンである僕も以前から思っていました。調和ですね^^
綺麗な方も整形をされた方は直ぐ解ります。少ない細胞から一緒に増えて来ているのですから、美しいそこそこは別に違和感は解りますね。ただ、行為は否定はしていませんが、です。^^
Commented
by
n_shioya at 2009-10-02 23:00
|
塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
以前の記事
検索
カテゴリ
全体 アンチエイジング スキンケア 医療崩壊 キズのケア QOL 老年病 介護 手術 全身療法 食生活 サプリメント エクササイズ エステティック ヘアケア 美について コーヒーブレーク 医療全般 原発事故 睡眠 美容外科 再生医療 再生医療 未分類 最新のコメント
フォロー中のブログ
ICELANDia アイ... 九十代万歳! (旧 八... ・・・いいんじゃない? 京都発、ヘッドハンターの日記 美容外科医のモノローグ ArtArtArt 芙蓉のひとりごと 真を求めて 皆様とともに... ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
|
ファン申請 |
||