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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
フランケルの「夜と霧」を読み終えた。
じつはこれが三冊目である、三回目ではない。 始めに買った二冊はどうしても読むことができなかった。あまりにも描かれている収容所生活が生々しかったからだろうか。 霜山氏によって1956年に訳された旧版は、原著が1947年に刊行されている。 そして今回は、1977年に刊行された新版に基づいて、2002年に別の訳者が訳出したものである。 60年たってやっと読み切るだけの冷静さを僕が取り戻したということだろうか。 アンチエイジングを掘り下げて、QOL,生活の質にたどり着いた時、究極は生の意義、つまり生きることの意味を問い続ける以上、このフランケルの「夜と霧」を避けて通ることができなくなったともいえる。 それにしても強靭な精神の持ち主である。 勿論著者が精神医学者であるとしても、あれほど過酷な環境の中で、理性を保ち続けて、しかも自分を客観視でいるとは信じがたいほどである。 「心理学者、強制収容所を体験する」という原題ほど、ないようにふさわしいものはない。 それにしても、とまだこの戦争被害者意識から抜けられぬブログの著者は考える。我々の子供時代も、日本は収容所列島ではなかったろうかと。 神国日本の天皇の敷いた恐怖政治と、その手下どもの帝国軍人の野獣性と残虐行為は、程度に雲泥の差はあれ、強制収容所のナチの軍人の実態と何ら変わるところはない。 精神教育の名のもと、配属将校から理由もなくピンタを食らい、果てはお互いに向き合って2列に並ばされ、ピンタの打ち合いをさせられる。 一言でも理性的な言葉を発すれば、お前ら虫けらが何とぬかす、天皇陛下の為に死ぬことにしかお前らの命の価値はない、と足蹴にされた。 このような狂気の世界が、8月15日に解放されるまで続いた。 最初の訳者の霜山氏も同様に感じたようである。 彼の新訳者への言葉の一部を、いささか長くなるが引用する。 「・・・このような超国家主義の悲劇は、周知のように本邦にも存在し、多くの死と不幸を人々にもたらした。軍閥は相克しつつ堕落し、良識ある国民、特に知識階級に対しては、国家神道の強制、および治安維持法による(ナチスに負けない)残忍な逮捕、無期限な留置、拷問、懲役で「転向」を強制するのであった。 戦争の末期に至るや、「特攻作戦」と称して強制的な命令によって、あらゆる中古機、練習機、古い水上機等を主として、これを爆装して、陸海軍合わせて何と七千名の少年兵出身で、やっと操縦できる程度の低いパイロットをのせて、いわゆる「神風」の体当たり作戦に投じ、ほとんど全滅であった。この無法な作戦の上奏に対して、天皇が許可しなければそれまでであった。しかし彼は黙認してしまった。私には未だに血の逆流する思いが断ち切れない。・・」
by n_shioya
| 2009-10-20 23:58
| コーヒーブレーク
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Comments(8)
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Doc.K
at 2009-10-21 08:03
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父上 塩谷信男先生の片鱗に触れることが出来ます。とても輝いた(94歳時の)essayですのでこのブログに立ち寄った方々は是非お読みになってください。アンチエイジングの極意の一部も分かります。
週刊ゴルフダイジェスト 11/3(今コンビニで買えます 370円) Weekly Golf Digest Essay of Legend (1965-2009) p127(p22~23)
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御隠居@横町
at 2009-10-21 08:10
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この話題になると東京市民としてはまた同じ反応するわけですが。
うちは山の手ですが、下町の人たちは東京大空襲で肉親・友人・知人を失ってることが多く、やはり最高責任者は許せないとする人が多い。あまりにも悲惨なので互いにあまり語りたがりませんが。語ったほうがいいのかもしれませんね。 また、お父様の本を読んでいたら、開業医として大活躍されていたお父様ご自身も30を過ぎて徴兵されて一兵卒として爆弾抱えてタンクの下敷きにされる特攻作戦の訓練をさせられてた話があって、本当に驚きました。 戦争の総括はされているのでしょうか。前にパリからアエロフロートに乗ったらとなりのフランス人が、アジアで商売しているそうですが、アジアの人たちは今でも日本が戦争について謝罪するのを待っていると現地の感情を話してました。フランス人からすれば、ドイツは戦争の謝罪をしたことになっているのだとか。 戦前の日本にもいいところはあったという右翼の論客には賛同するところがありますが、行きすぎて、戦前の日本賛美・日本に戦争責任はないということになると、これはもう嫌悪感しか抱きませんし、教育現場での体罰肯定論には身の毛がよだちます。
私は昭和19年生まれですので、先生のようなつらい戦争体験をしていないのですが、全体主義あるいは軍国主義がいかに悲惨な行動を軍人や支配者にとらせるようになるかを、語り継いでもらいたいものです。
アフガニスタンやイラクの戦争に加担することが、いずれ北朝鮮などを相手にせざるを得ない羽目になってしまうことを、そしてまた、1945年の悲惨な沖縄の悪夢に戻ってしまうかもしれないことを、繰り返し言い伝えてほしいものです。 そのためには、真の民主主義を確立することです。お金のかからない選挙や政治ができるようにすることです。政治家は極端に言えば無報酬でいいのです。社会に貢献する気概で政治に取り組むことが、利益集団や圧力団体から政治を独立させることになるからです。
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ruhiginoue at 2009-10-21 15:42
東京大空襲で被害が広がったのは、荒唐無稽な防空演習を指示した官僚たちにも原因があると言われていますが,その中心にいた官僚が責任を問われることもなく戦後は都知事になりました。鈴木俊一氏のことですが、彼は731部隊に勤務してもいました。
そういうことを知らずに投票するなどした都民も多く,なかには戦争体験を語っている人も少なくありませんでした。
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n_shioya at 2009-10-21 23:23
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n_shioya at 2009-10-21 23:24
御隠居@横町さん:
やはりこの辺で、事実の総括と後世への継承が必要ですね。
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n_shioya at 2009-10-21 23:29
jupiterさん:
かつてアメリカの「良心的戦争忌避者(コンシェンシャス・オブジェクター)」のお話を聞いた時、ただ平和を唱えるだけでは平和は保てない。平和えのあらゆる努力をして、それでもなお戦争になった時、やむを得なく忌避の道をとったのだという言葉が非常に印象に残ってます。
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n_shioya at 2009-10-21 23:30
ruhiginoueさん:
“過去を水に流す”ことにこれほど長けた民族はほかにないでしょうね。
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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