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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
アンチエイジングに関わるようになってから、改めて読み返したい本が二冊あった。
一つは昨日取り上げた「海からの贈り物」で、今一つは、森鴎外の「ウィタ・セクスアリス」である。 改めて読み返すと、よくあの時代にしかも鴎外のような立場の男が、あれほど赤裸々に自分の性生活を、小説とはいえ暴露出来たものと感心させられる。 この中で主人公の金井博士に次のように言わせている。 「自分は無能力者ではない。Impotent ではない。世間の人は性欲の虎を放し飼いにして、どうかすると、その背に騎って、滅亡の谷に落ちる。自分は性欲の虎を馴らしておさえている。・・・」 年をとればその虎も、ひとりでに大人しくなってくる。 最近はどういう統計かわからないが、日本人が世界で一番“性”に淡白であると、あたかも怠慢であるかのごとく強調されているが、なんでわざわざ寝た虎を起こす必要があるのか疑わしい。 白人との付き合いも長く、彼らの赤裸々な生態に接していると、あまりにも虎に振り回され、振り落とされるものが多いので嘆かわしくなる。 しかもアメリカのアンチエイジングの専門学会では露骨にセックスの問題が中心課題として強調されている。 ポンコツ車のエンジンだけ馬力をあげて、無理やりスピードだけを出させるような試みは滑稽でさえある。 「海からの贈り物」では、人生の各ステージにふさわしいライフスタイルが、貝殻になぞらえて展開する。 勿論僕も高齢者の性の問題をないがしろにしていいとは思わない。 有吉佐和子もその問題は重々承知し、「恍惚の人」を発表した際、高齢者の性の問題はあまりにも大きな問題で、それだけで一つの作品とすべきなので、「恍惚の人」からはあえてその問題をはずして書いた、と述べているほどである。 かといって僕がアンチエイジングネットワークの五カ条の一つに「いくつになっても男と女」をあげたのは、決して無理して「失楽園」に励めということでは毛頭ない。 高齢者でも、その立場と価値観に応じ、異性を意識したライフスタイルの重要性を取り上げただけである。 そしてその異性との関わりについては、その存在に恵まれている場合は、改めて配偶者と向き合うことが最優先課題となることは、「海からの贈り物」の後半でも鋭い考察がなされているとおりである。
by n_shioya
| 2009-11-02 22:59
| アンチエイジング
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Comments(5)
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HOPE
at 2009-11-03 09:28
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異性との関わりはとても大切なものと思い育った身としては、
子供達はどう学んで行くのかも気になります 余りに過激な情報の氾濫と反比例するように 「まともに性的発達をとげられなかった」とおぼしき大人が多過ぎて… ともすると、汚らわしいと思い込みやすい敏感な年頃に本当に汚らわしい情報が多く、 また「若さ偏重」までもが低年齢化して「割り切って若さを売る」子供達までいて… 子供達の時代に異性との関わりを「大切なもの」と感じ取れなければ、年齢を重ねてからの関わりについては、 他人はもちろん自分の気持ちすら受け止められないであろうと危惧しています なんか世代を超えて繋がった問題なんですね、きっと
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n_shioya at 2009-11-03 21:16
HOPE さん:
人間として基本的なしつけが、敗戦とともに抹殺され、今日を招いたような気がします。 自己中、草食系男子等々、元来は家庭のあり方の問題で、学校教育に責めを負わせるのはいかがかと思います。 もちろん文科省という時代錯誤の役所が、時代錯誤の教育に固執していることは問題ですが。
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at 2009-11-03 21:39
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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at 2009-11-03 21:41
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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at 2009-11-03 21:42
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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