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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
数日前、故大森誠一先生のことを書いて以来、故人の懐かしい思い出があとからあとから蘇ってきた。
ともかく型破りな人物で、逸話には事欠かない。 又、ムンテラの名人でもあった。 ムンテラとは、和製ドイツ語、ムント(口)テラピー(治療)の略で、患者に対する説明を意味する。 帰国後一時、大森先生の診察を見学させていただいたことがある。 形成外科では、火傷、交通事故、痣など顔の悩みの患者が多い。 ある日、外傷で顔がつぶれた若い女性が診察室に入ってきた。 座った患者を前にして、大森先生は何も聞かず、ややあって“君、今までつらかったろうな。”と語りかけた。 想いがこみ上げた患者は、激しく嗚咽しながら“ええ、“とだけ答え、大森先生の診察を受け、治療の説明に聞き入った。 手術予約しての帰り際、“先生に手術していただければ、私、死んでも本望です。” と涙を拭きながら診察室を後にした。 回診中はいつも医局員は怒鳴られどおしで、大学から実習で回ってくる医学生は、青ざめておろおろと戻ってくるのが常だった。 怒られ役のトップは現東京女子医大の名誉教授平山先生だった。 ある日、超ド級の雷が落ちた後で、大森先生は僕を自室に呼んでこう言われた。 “塩谷君、俺がなぜ患者の前で助手を怒鳴りつけるかわかるかい? ああすれば、もし手術が失敗した時は、患者は助手のミスと思うからさ。” と独特の笑みを浮かべ、こともなげに言われた。 いと辛きものは宮仕え、と思い知らされた一こまである。 前述の患者については手術場での後日談があるが、患者、医師双方の個人情報の問題もあるので、ここでは割愛する。
by n_shioya
| 2010-06-18 22:02
| 手術
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Comments(3)
先生、大森先生はまさにambivalentな、魅力的な人物ですね。
小説の主人公にもなり得るのではないでしょうか?
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先生、実はそのお言葉を待っておりました。是非お願いします。
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![]() 塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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