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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
ゴッホ展
子供の頃に読んだので記憶は定かではないが、確かマーク・トウエンの短編で、次のような話だったと思う。
「ある男が汽車で旅をしていた。たまたま同席の男と会話がはずみ、相手が身の上話を始めた。
“画家を志し、仲間たちと画業に励むが、誰の絵も一向に売れない。
そこで仲間の一人が提案した。
画家は死ぬと急に名声があがることがある。この中でくじ引きして、当たった奴が死んだことになってこの世から姿を消したらどうだろう。
そこでくじを引いたら私が当たってしまったのです。幸い私の絵が売れ始め、仲間が分け前をよこしてくれます。
だが私はもうこの世にはいないことになっています。
あ、駅に着きましたな。私はここで下車します。
詰らぬ話をお聞かせしましたが・・・わたしの名ですか。
ミレーと申します。”」

b0084241_22452216.jpgこんな話を想いだしたのは、今日、新国立美術館でゴッホ展を観ながらである。
最近よくそうするのだが、音声ガイドで作品を見て回った。
昔は馬鹿にしていたが、作家の生い立ちや、作品のバックグラウンド、そしてまた、見どころなどが分かり、慣れると便利なものだ。
だが、最後のところで
“そうしてゴッホは36歳で自分で命を絶ちましたが、それまでに売れた絵は一枚だけでした。”
というナレーションが入りちょっと不安になった。
それは泰西名画を観るときに、しばしば感ずる不安である。

b0084241_22462791.jpg我々世代は、現物に接する前に複製や解説書で手ほどきを受けている。丁度音声ガイドが教えてくれるように。
だから、名画を見て感動しても、解説書に書かれた感動をなぞっているだけではないかという不安である。
もし予備知識なしで、骨董屋のがらくたの中に埋もれているゴッホを見た時、果たして名作として認識するだけの眼力があるだろうか、という不安である。

かといってもう、ゴーギャンの自画像を見てゲーッと思い、ピカソの泣く女を見せられてケタケタ笑った子供時代からやりなすことができない。これは実物抜きで解説を水先案内に、西洋芸術に慣れ親しんだ者の悲哀ともいえる。b0084241_224707.jpg
by n_shioya | 2010-11-12 22:50 | 美について | Comments(6)
Commented by valkyries at 2010-11-13 09:20 x
先生、改めて考えさせられました。芸術作品の価値と価格、絶対的審美眼、難しい問題ですね。
「作家が死ぬと作品の価値が上がる。何故ならそれ以上製作されない事が確実だから」と私は銀座の超名門画廊の女性オーナーから直接聞いた事があります。その時傍らにいた作家の複雑な表情と言ったら・・・。
Commented by ruhiginoue at 2010-11-13 16:47
連想ですが、
筒井康隆の短編小説「自殺悲願」は、売れなくなった小説家が、自殺して話題作りすればまた売れると樹海に行ったり高層ビルへ行ったりしては、自殺に失敗する様子を可笑しく描いてました。伊福部昭の評論「音楽入門」http://www.amazon.co.jp/音楽入門―音楽鑑賞の立場-伊福部-昭/dp/4118800152では、美術館で学芸員の説明を熱心に書き取って作品は見ていないよくある風景とか、そばつゆをたっぷり漬けて食べたかったと言い残した食通の寓話とかを引き合いに出し、芸術鑑賞の陥穽を指摘してました。
Commented by n_shioya at 2010-11-13 22:48
valkyries さん:
そのオーナーも思い切ったことをいう方ですね。
ぼくも、画商にとって作品の評価の基準は売れるかどうかだけだと、さる抽象画専門の画商に言われたことがあります。
Commented by n_shioya at 2010-11-13 22:51
ruhiginoueさん:
なんでも自然体でいければいいのですが・・・
学校教育が駄目にするのでしょうか。
Commented by 御隠居@横丁 at 2010-11-14 12:41 x
芸能界やプロアスリートのようなショービジネスでも、やれ家族がどうとか生い立ちがどうとか苦労を克服したとか、芸や技術よりそちらが売りになることが多い。
そりゃ、バッティングやピッチングの細かい技術などプロ同士でしかわからず、人間ドラマのほうがてっとりばやく注目引くよなあ、とは思うのですが。
オリンピックのたびに「家族の絆」は食傷しますね。
Commented by n_shioya at 2010-11-14 21:22
御隠居@横丁さん:
いわば楽屋落ちのネタで稼ごうとするのは、ちょっとうんざりしますね。


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