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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
スカーレス・ヒーリング
一昨日のブログで紹介したイギリスのファーガソン教授が特別講義を慶應大学で行った。
内容は学会の講演とほぼ同じであるが、時間が十分にあったので、じっくりと議論することができた。
もし彼の発表が本当ならば、瘢痕治療において革命的な新薬が出現したと言える。
一言でいえば、手術やけがの後の傷跡を目立たなくし、うまくいけば傷跡を残さない、スカーレスヒーリングも夢ではなくなるからだ。
スカーレス・ヒーリング_b0084241_21552626.jpg

ではなぜ傷跡が残るかから説明しなければならないだろう。
人間のような高等動物は傷をした時、瘢痕組織によって修復される。これが傷跡として残る。その主体はコラーゲンだが、吸収されることなく永久に存続する。もしこれがなくなれば、キズは開いてしまうからだ。
真皮も主体はコラーゲンだが、真皮と瘢痕組織ではコラーゲンの構築が違うために、程度の差はあれ瘢痕組織は見た目に真皮とは異なって映る。
我々が一旦出来た傷跡は消すことはできない、というのは、医学的な意味での瘢痕組織は消すことができないということである。我々形成外科医に出来ることは、それを多少とも目立たなくすることだ。

下等動物は違う。キズをすればその部位の組織が再生し、跡形なく治癒する。
ここで個体発生は系統発生を繰り返す、という高校時代の生物学の知識を思い起こしてして欲しい。
人間の胎児も受精卵からスタートし、下等動物と同様な時期を経て、嬰児になると考えられている。
詰り胎児の早い時期に手術をすれば、スカーレスヒーリングも理論的には可能で、すでに動物実験では証明されている。これを胎児外科と呼ぶが、母子ともにリスクが大きく実際的ではない。
そこで胎児のキズの治りに関与する物質を突き止めて、成人のキズに投与すれば、胎児と同じスカーレスヒーリングが可能では、ということが当然考えられる。

ファーガソン教授の開発した手法は、この線に沿った彼の長年の研究の成果である。
具体的には胎児の創傷治癒で活躍する物質の一つを見出し、それを成人のキズに注入することに成功したというわけだ。
一刻も早い実用化が望まれる。
by n_shioya | 2010-12-02 21:57 | キズのケア | Comments(5)
Commented by 船長 at 2010-12-03 08:36 x
すごいですね
発想はなるほど…理屈も納得…
でも、それを実際に持っていくのが普通ではないですね
多くの方に選択肢が増えますように!
Commented by 御隠居@横丁 at 2010-12-03 10:55 x
個体発生は系統発生を繰り返すontogeny recapitulates phylogenyって、なぜかはまったくわからないんですよね。
科学的にいえば仮説のようですが、こうやっていまでもその考えから、すぐれた技術が出てくるんですね。
Commented by n_shioya at 2010-12-03 21:31
船長 さん:
実用化には、まだ多少の紆余曲折がありそうです。
Commented by n_shioya at 2010-12-03 21:34
御隠居@横丁さん:
わからぬまま現実が先行し、理論が後追いすることとなるのでしょうか。
Commented by つるつる at 2011-09-04 15:44 x
実用化には時間がかかりますか?臨床でもいいので受けてみたい。あごに傷があるので消したいです。助けてほしいです・


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