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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
さる11月25日は三島由紀夫の40回忌であった。
あの日のことを僕は今でも鮮明に思い出す。 関内のあたりを走っている時、車のラジオから突如ニュースが流れだし、 三島の自衛隊突入と自決を伝えた。 やがてその全貌が伝えられると、日本中がこの奇矯な事件に衝撃を受けた。 僕はここで三島論を展開しようとは思わない。すでに数多くの識者がそれぞれに解釈を試みているからである。 だが僕は、三島が「仮面の告白」を引っ提げて華々しく登場して以来、大半の作品を読んできたつもりだが、いまだに彼の行動とその結末は理解に苦しむ。 そして遺作となった「豊饒の海」は、何か張子の虎のような退屈な小説であった。 改めて感ずるのは、彼の小説すべてが、何か空虚な高笑いに聞こえることである。 そして彼の美学の象徴の天皇観は僕の理解の外である。所詮土人の酋長にすぎない者に対し、なぜあのようなアナクロニズムな崇敬を強要するのか。 ただ、今言えることは、彼が自決の際の檄文の一節は、恐ろしいほどに今の日本の現状を予見していることは確かだ。 “われわれは戦後の日本が、経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失い、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみ捧げられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を涜してゆくのを、歯噛みをしながら見ていなければならなかった。” だが、彼がボディビルに凝ったのは、切腹の際、脂肪が醜くはみ出さぬようとの計算があったと誰かが言っていたことも付け加えておく。 彼にとってすべての事象は、こうも料理できる、ああも料理できると、マニピュレートする対象にすぎなかったのではなかろうか。
by n_shioya
| 2010-12-07 21:11
| コーヒーブレーク
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Comments(10)
先生、私の先月のブログにも書きましたが、彼は美しい小説の創造と同時に常軌を逸した行動を起こす、将に多面的な人間でした。先生の御指摘のように、彼の予見の正確さはまさに天才的です。
今の時代に彼の行為を批判するのは簡単ですが、そんな評論家たちに「ではあなたは現在どんな行為を起こしたのか?」と問いただしたい思いに駆られます。 何の行為も成さず、安全地帯に身を置いて他人の行動を批判する、そんな安直な人間が多い世の中ですね。
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at 2010-12-08 14:16
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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ruhiginoue at 2010-12-08 18:58
「黒蜥蜴」で共演した美輪明宏から、背広の下はパットだらけの痩せをからかわれて怒った直後に、ボディービルを始めたと美輪が証言してますが、彼らは同性愛でした。
盾の会の仲間ともその関係で、菊の誓いとは天皇の紋章ではなく肛門のことでした。 初期作品は男色を扱っていたけど、あとは三面記事や能の翻案など、文体で売り中身には独創性がありませんでした。 彼は性事を政治にすりかえていただけです。現在の医学水準なら、もっと詳しい精神分析ができたはずです。
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グリーンノート
at 2010-12-08 22:48
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ある知人が、アメリカのハイスクール(バカロレアクラスという一応進学クラス)で文学の授業で三島を読んだという。
それで私が日本人のあなたはともかく、白人の生徒達って三島の文学をどのように理解していたの?って聞いたら、「みんな気持ち悪いって言ってたよ。でもそれが正しい理解なんじゃない?」ふーん。。。彼は今21歳です。
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御隠居@横丁
at 2010-12-09 12:49
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戦時中はさんざ徴兵逃げてたのに何をいまさら……という意見はかなり前からありますが、エッセイ集「不道徳教育講座」でも、「戦争中は文弱で居心地悪かったけど、絶対戦争起きない世になったので、こうやってボディビルでからだ鍛えてますけどね」旨、自嘲で書いてましたね。
あの事件もそういう心の闇が引き起こしたとはいわれるのですが……。 楯の会は男色目的だけに設立したのでしょうか。彼の男色もこれまた悪趣味なおふざけとの説もある。どれだけ本気だったか、これもうかがい知れず。
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n_shioya at 2010-12-09 21:55
valkyries さん:
やはり三島には人を不安にさせる何かがありますね。
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n_shioya at 2010-12-09 21:57
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n_shioya at 2010-12-09 21:57
ruhiginoueさん;
確かに三島の多面性に我々は困惑させられます。
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n_shioya at 2010-12-09 21:58
グリーンノートさん;
案外子供は正直なのかもしれませんね。
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n_shioya at 2010-12-09 21:59
御隠居@横丁さん;
これも三島、あれも三島ということで、何も無理に割り切る必要はないのかもしれませんね。
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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