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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
パソコンのご機嫌が治ったようである。
パソコン不調の間、辻村伊助の「スイス日記」を読みふけっていた。彼は今、グリンデルワルドからルツェルンにかけて旅を続けている。 その軌跡をたどるべく、ミシュランのガイドや地図を渉猟していると、僕の昔の「旅日記」が出てきた。 丁度、国際美容外科でルツェルンに滞在中、グリンデルワルドへの日帰りのドライブ紀行が載っていたので、いささか長いがアップさせていただく、 「ホテルには配車されたたレンタカーは,小型の赤いベンツだった. 助手席の古山先生に今日のナヴィゲーターをお願いし,ミシュランの地図で今日のコーを説明する. 後ろの席には大谷津先生,黒田女史そして我が配偶者の三人が窮屈そうに,だが楽しそうに押し込められている. ここはルツェルンの湖畔。パレス・ホテルの玄関先だ. ポーターの笑顔に送られ、マロニエの葉の散り敷く並木道を走りだす。 湖の東岸にそった道はアクセン・シュトラーセといって名高いシーニック・ロードだが,今日は時間がないのでいささか無粋だが西よりの高速道路を使うことにした. 無粋といっても日本のような騒音防止の塀で目隠しされた,また高速の名の恥ずかしい渋滞,ダンプの行き交う危険一杯とは違う.さすがスイスである. まず空気が澄んでいる.車はすくない.そして道の両側には緑の牧場には,牛や羊が陽光の中で牧草をはんでいる. いやー素晴らしいですね,と隣では古山君の声は上ずってている.嬉しくなるともうウファウファと、子供みたいに笑いがとまらなくなるのが彼のいい所だ. 大谷津君はズームレンズを伸ばしたり縮めたり,カメラ操作に忙しい. 女性二人は珍しく口をつぐみ,ひたすらスイスの風物を脳裏に焼きつけているようだ. 僕はといえば例によって今夜の食事は何処にしようか,懸命に頭のなかでミシュランのレストラン・ガイドを繰っている.肉もいいが,魚も美味い.いややっぱりフォンデュかな.いまからだと丁度夕刻にグリンデルワルトに着くはず.アイガーの夕映えを眺めながらワインをあけてと考えると,もう目の前にチーズがぐつぐつと泡立って,香ばしさがただよってくるようである. そこでハンドルをしかと握り直し,アクセルをぐっと踏み込んだ. 高速でゴッダルトまではあっというまだった.ここからは長いトンネルを抜けるとイタリヤである.ルガノ,コモ等北イタリヤの美しい湖水地帯もそう遠くない.時間がないので心残りだがここで高速を下りて西へ向かう. 見下ろせば切り立った断崖絶壁.彼方には青空の果てに銀色に輝くアルプスといったスリリングなコースと,平穏無事は平野を走るのと何方を選びますか,と今日のドライブにアドバイスをくれたスイスの友人に,勿論,前者と答えた僕だったが,成るほど素晴らしいラリー・コースである.アップ・ダウン,ヘアピン・ターンの連続でスイスの景観がジェット・コースターの様に旋回する. フルカ峠で一と休みして,氷河を眺める.大谷津君がコカ・コラを五杯かかえて売店からもどってきた.“コーヒーといったつもりでしたが・・・” と気まり悪そうである。 そのさき更に山を上り,下り,湖の辺を走り,幾つかの部落を突き抜けてまだ日のある中にインターラーケンに到着した.ここからグリンデルワルドまではユングフラウを右に眺めながらの一気に上りの山道である. 谷を隔ててアイガーが目の前に迫るテラスに腰を落ち着けて,まずワインで乾杯した. 日が陰り始めると,風が急に肌寒い. 西の空は茜色に染まり、アイガーは夕日を受けてオレンジ色に輝き始めた.やがて朱,紫と刻々に色を変えて行く.そしてそれが夕闇にすっぽりと包まれ,ポット灯った一番星に呼応するかのように、麓の村にも明かりがちらほらし始めるのを見届けて,僕たちは震えながら戸をあけてダイニングルームへ足を踏み入れた. 中から賑やかな歌声と共に僕たちを迎えてくれたのは、あのファッと懐かしいチーズのアロマだった.」 これはもう20年ほど前の話だ。 文中の古山君は今、自由が丘クリニックで美療医療に専念し、大谷津君は信州の佐久病院の形成外科部長として、特に熱傷治療で地域医療に貢献している。 黒田女史は残念ながら数年前に亡くなった。其の直前、永年のフランス文化紹介の貢献に対し、フランス政府から勲章が贈られた。
by n_shioya
| 2011-05-14 13:17
| コーヒーブレーク
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Comments(6)
先生、皆さんの楽しそうなご様子が伝わってきます。コーヒーを頼んだらコーラが来たくだりなど、笑ってしまいました。
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at 2011-05-14 22:24
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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n_shioya at 2011-05-15 21:15
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n_shioya at 2011-05-15 21:16
ローズマリーさん:
本当に楽しかったですよ。
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マッツ
at 2011-05-15 21:32
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アヤ:
日記を楽しく読みました。読んでいて、アクティブな様子が生き生きと伝わってきたので、きっとアヤが30代か40代ころに書いた日記かと思いきや、わずか20年前ですか??? こういうのを読むと元気付けられます。 私はこの夏はスイスやトスカーナをドライブする予定です。道連れも多いのでコーラとコーヒーを間違えないします。
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n_shioya at 2011-05-16 21:12
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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