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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
「クレオパトラの鼻、それがもう少し低かったら、大地の全面は変わっていたろう」とはパスカルのパンセの中の有名なせりふである。
容貌のメッセージ性を追求するものに取っては、“たった一人の女性の容貌が世界を動かしうる”と言う有り難い箴言である。 以前、鼻について美の基準を探っていたとき、ふと思いついて、クレオパトラの肖像を探したことがある。そのときは、ルーブルにある貨幣のプロフィールが、現存する唯一のクレオパトラの面影だと教えられていた。 その後、東京国立博物館で開催された「ベルリンの至宝展」で、クレオパトラの頭部のブロンズを観る機会があった。 いささかぼやけた貨幣のプロフィールと違い、その彫像では、いかにも古代の王たちを手玉に取った、知的でしかも近代的ともいえる女性の顔貌が刻まれていた。 そして肝心の鼻は? ふーむ、と僕は頭をかしげてしまった。 いささか大きすぎる。一寸削れば理想の美女になるのだが、というのが実感だった。 僕がこうまでクレオパトラの鼻にこだわるのは、欧米では高い鼻は忌み嫌われ、ふつう鼻の美容整形といえば、間違いなく低く小さくすることを意味するので、そもそもパスカルの論旨にいささか違和感を感じていたからである しかもベルリン美術館のクレオパトラの彫像を見る限り、クレオパトラの鼻は美の基準から“大きく”外れている。 もっとも、パスカルはこの話を単に例えとして記述しているに過ぎない。詰まり、彼の論旨から言えば、鼻の高さがどちらに変わってもかまわない、要は「人間とは、またその存在が紡ぎ出す歴史とは、何か少しを変えてしまうだけで何もかもが変わってしまう。それほど、それらは絶対的指針を持たぬ流動的で儚いものなのだ」という思想を言葉にするために、『クレオパトラの鼻』を引き合いに出したにすぎないのだから。
by n_shioya
| 2013-01-12 22:06
| 美について
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Comments(2)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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