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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
寿司好きで銀座“久兵衛”の名を知らない方はいないだろう。
僕も、学会の懇親会のバッフェでオークラや京王プラザの出店では口にしたことはあるが、銀座の本店とはついぞ縁がなかった。 その僕を、銀座の本店に連れてってくれたのは、「ざくろ」や「たくみ」のときと同じにやはりアメリカ人の仲間である。 これが同じ寿司かと思うほどの逸品だった。ご主人の応対も気さくで、食後店内を案内してくださった。 10人ほど入る個室があり、“ここではすべて魯山人の器でお出しするのですよ”といわれ、僕は図らずも50年前の後味の悪い出会いを思い出した。 当時北鎌倉に魯山人は釜を持っていた。あたりはまだ水田で、遠く離れた隣にはイサム野口が住んでいた。 その釜開きに誘ってくれたのも、当時付き合っていたブラウンというアメリカの軍医将校だった。 釜開きというのは、どんな作品が誕生するか、作家にとっても緊張のときである。 織部風やら何やら次々と新作が釜から誕生する。そのたびに観客から嘆声が上がる。 その後で、寿司が振舞われた。そのときは新橋の新富寿司が屋台を開いていたようにおもう。 宴もたけなわになり、ブラウンが魯山人の写真を撮りたいので、頼んでくれという。 僕が気軽に声をかけた瞬間、魯山人は急に怒り出した。 “写真だと。写真、写真とうるさくてかなわん、アメリカの奴らは!”と怒鳴り散らす。ブラウンと僕は部屋の隅に逃げ隠れた。 するとまた罵声が飛んだ。“早くせんか!” 魯山人は部屋の真ん中に仁王立ちになっている。 ともかくシャッターを切ってほうほうの体で退席した。 以来魯山人と聞くと体が硬直する。 だが、最近、テレビで彼の生い立ちを知り、あの倣岸さも過酷な幼児体験の裏返しとわかり、多少の同情も禁じえなくなった。 これを機会にそろそろ僕も過去のいきさつと決別して、懐が許せば路山人の器で久兵衛の寿司を賞味したいと思う。 魯山人によれば“食器は料理の着物”だそうだから。
by n_shioya
| 2013-08-11 20:16
| 食生活
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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