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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。
失われた時を求めて
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“それで今は何をしてるの?”
大蔵省から某銀行の頭取を勤め上げ、今は自宅で悠々自適の身分のT は答えた。
“朝起きて、飯を食って、それから3時間ばかり本を読む。
今読んでるのはプルーストだ。原書で読んでいるので、日に数ページしか進まないが。”
そういえば彼は旧制一高では文丙で、フランス語が第二外国語だった。
東京クラブで昔のクラスメート6組が夫婦で集まって、恒例の晩餐会を催した折の話である。
元外務省、元日銀、元大学教授など皆現役時代の肩書きはいかめしいが、今こうして集まると昔の悪餓鬼に戻り、ガールフレンドの取り合いの話や、酒の席での失敗談等に花が咲いた。
あの長編「失われたときを求めて」なら僕も挑戦したが、“例の出だしのマドレーヌの香ばしさのあたりで挫折したままだ。”と白状すると、T は言った。
“あれにはなかなかいい台詞が出てくるよ。”
“例えば?”
“「美しい女たちのことは、想像力がない男たちに任せておこう」、なんてのはどうだ。”
確かにあの頃旧制高校は全寮制度で、しかもその寮は女人禁制なので、想像力は無限に羽ばたいてくれた。
でもそうすると、実在の“美女軍団”を看板にして人気上昇中?のブロガーなど、最も想像力に乏しい男ということになるのか。
どだいプルーストなど、厚くカーテンを閉め切った部屋に暗く生きていた変わり者で、そんな台詞はやせ我慢、「僕にはやはり想像の産物よりも、“生身の美女”がありがたいよ、」とまぜ返そうかと思ったがやめておいた。
せっかく彼が、“憧れ”のみが生きがいだった、今は懐かしい青春時代の回想に浸っているを妨げたくなかったからである。
by n_shioya | 2016-02-25 21:02 | コーヒーブレーク | Comments(0)


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