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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
手術を勧められているんですが、本当に必要ですか。とかあの先生で大丈夫ですか。など聞かれることは医者なら年中あることだ。
突然手術しましょうといわれれば、誰しも不安になるのはわかるが、これまでは主治医を差し置いて他の医師の意見を聞くというのは遠慮があったようだ。 又こちらも診察もせず、検査データもなしにあまり無責任なことは言えず、僕個人としてはよほどのことがない限り、医師を変えるのは賛成でないとお答えすることが多かった。 しかし最近では医師のほうも、インフォームドコンセントの立場からも、他の方のご意見を聞かれても結構ですよ、と患者の気持ちを尊重して協力的になってきたし、そのためのセコンドオピニオン外来を設けるところも増えてきたのは結構なことである。 ただこれが、手術のうまい下手の判断となると、自分の専門領域であっても、その外科医の手術に立ち会わない限り、学会発表や論文だけでは決めかねる。 また、世間の評判などあまりあてにならないことは、この僕でさえ名医といわれたこともあるからお察しがつくでしょう。 手術のうまい下手には色々なファクターが絡み、そう簡単に客観的に評価できるも出なく、まして数値化できるものでもない。 昔は盲腸の手術など、傷跡の長さで素人は推し量っていた。短いほどうまい手術だという錯覚である。よく2センチほどの切開から、魚を吊り上げるように盲腸を取る名人の話を聞いたことがあるが、これはこぶしが入るほど十分に切開して、腹部の中を精査し無理なく盲腸を取ったほうがリスクが少ないという、アメリカの正統な外科の立場からは邪道とされてきた。 ところが最近は内視鏡手術といって、数ミリの切開で遠隔操作で胃がんの手術まで行ってしまう。変われば変わるものである。 手術時間も早ければよいというものではない。麻酔のリスクは導入と覚醒のときで、いったん麻酔がかかれば、麻酔時間が1時間だろうが10時間だろうがあまり関係ない。 だから、だらだらメスを振り回すのが良いというわけでなく、同じ結果を得られるなら早いに越したことはない。 だが形成外科の場合は、デザインを色々考えながら手術を進めるので、結果的には麻酔医をいらいらさせることも多いし、いったん縫い終わっても気に入らなければ、ばっさり糸をはさみで切りはずし、器械出しの看護師がデートに遅れそうで半ベソをかいてもそれは無視して、受針器を持ち変えシコシコと縫い直す勇気と根気も必要である。 僕が名形成外科医であれなかったのは、一に看護師思いだったからだといえば、いささか身勝手な弁解になるだろうか。
by n_shioya
| 2006-09-16 18:40
| 手術
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Comments(1)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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