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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
僕はブログのほかに、NPO法人アンチエイジングネットワークと、これもNPO法人創傷治癒センターの二つのサイトを管理している。
両方とも一番アクセスが多いのはFAQとカウンセリングであるが、一番の悩みはネット上のカウンセリングの限界である。 一般的な質問なら良いが、多くの場合は患者の個人的な問題が多い。つまり拝見しなければ具体的な答えはしにくく、回答は一般的なものにとどまり、その先は専門医の診察を受けてというコメントになってしまう。 もっと困るのは、明らかに医師の不手際か、不勉強とおもわれる場合である。 自分が診察しないで、口出しするのははばかれるし、何かそれなりの理由もあったかもしれない。 だが多くの場合、それなりの理由というのは、別の日本語に置き換えると医師の不勉強になることが多い。 しかも常識的に考えれば、明らかに患者に不利な状況も起こりうるといった場面にときおり遭遇する。 その一つが、傷を縫った後の抜糸の時期である。 通常は四肢や躯間の場合は7日間だが、顔の場合は4,5日で抜糸すべきである。 それ以上縫合糸を残すと、糸の刺激で縫い跡が残ることがある。最近はナイロンなどの合成糸を使うので、昔ほど刺激は少なくなったが、それでも、不必要に糸を残す必要はない。もしそれで傷が開くようなら縫い方に問題がある。 何故われわれ形成外科医がこれほど抜糸の時期にこだわるか? たとえ抜糸が早すぎて傷が開き幅広い目立つ傷跡が残っても、その修正は比較的簡単で、また可能である。 だが、傷と直角に、数本、数十本の縫い後が残った場合は、すべて含め広範囲に切り取って縫い寄せる修正が必要になる。 現在の常識で、もし縫い跡を残した場合は、術者の責任が問われても仕方がない。 でもケロイド体質ならしょうがないのでは? まず、本当のケロイドというのはごくまれである。また、ケロイド体質ならなおさら早めに抜糸して、絆創膏固定で逃げたほうが無難である。 要約すれば,顔のキズを縫った場合 ①抜糸は4,5日で行う ②後は一月から三月ほど3Mテープでの固定が望ましい。 これが原則である。 もし正当な理由、つまりそれなりの理由がないのに上記のことが守られないならば、並みの外科医なら不勉強として許されても、もし形成外科を名乗っているなら失格といわざるをえない。 そしてわが国では、患者や看護師の指摘で、おのが無知を悟らされた場合、突如猛り狂う"偉い先生"がまだまだ多いのが実情である。
by n_shioya
| 2008-02-15 22:10
| 手術
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Comments(18)
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icelandia at 2008-02-16 03:17
息子5-6歳の時にアメリカ旅行中、二段ベッドから落ちて額を4針縫うケガをしました。上記を読むと、とても適切な処置だったのですね。抜糸は4-5日後、当分の間抗生剤入りの軟膏を塗り乾かさないこと。一ヶ月間は傷にテープを貼り続け、傷口を太陽に当てないこと。
数年前私が腹部の手術を受けた際、傷口についての手入れの説明は上記のように丁寧なものではなかったです。が、息子の件があったので、自己判断でずっとテープを貼っていました。 アメリカの方がそういう点は徹底しているということでしょうか。傷口で訴訟なんて起こされたくないでしょうし。
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at 2008-02-16 07:31
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n_shioya at 2008-02-16 11:23
icelandiaさん:
朝起きると真っ先に覗くコメントです。そして、寝る前に眠い目をこすりながらアップしたことへの反応を確かめます。 コメント有難うございました。 正しい処置を受けられて良かったですね。 お子さんの、そして五字分のきずあとはその後如何ですか?
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n_shioya at 2008-02-16 11:25
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n_shioya at 2008-02-16 11:39
山路さん:
企業が医療を直接経営できるかどうか、この10年ほどくすぶっています。 いくつかの大手、海外を含めビジネスチャンスを虎視眈々と狙ってます。 ただ僕は、これからは医療も、良い商品を適正な価格で提供するという、良識あるビジネス感覚が必要とされる時代だと思います。 これはには医療提供者と企業とが役割分担を明確にし、究極のゴールを患者の利益に置いた、コラボレーションが前提になります。 日本では法律上、病院長廃止である必要がありますが、欧米では経営者である院長が一般人を入れたボードメンバーに図り、運営方針を決定し、医師はその枠内で医療行為に専念します。 医師が自分の論理を追及しすぎれば、病院は破産します。 経営者が利潤に目がくらめば、しわ寄せは医療の質に影響します。 なかなkこの兼ね合いが難しく、更に今は指摘保険制度がマネージドケアという形で導入され、アメリカでも医療制度崩壊の危機が叫ばれています。 今ちょうどこの辺を調査中なので、別の機会に、別の媒体でアピールして行こうと思っているところです。
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n_shioya at 2008-02-16 11:41
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Doc.K
at 2008-02-16 12:38
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思い出話:
研修医1年目に、教授のオペ後の70歳前後の男性の腹部の縫合部を6日目か7日目に抜糸したところ創部が離開してしまいました。回診時に教授は、「K君はあなたが若く見えるので若者と同じに抜糸してしまいました。再度縫合します」と言ってかばってくれました。翌日、私一人で腰麻下でしっかり縫合し、今度は8~9日目で抜糸しました。3カ月ほど経過した後、教授外来でその方にお会いしました。当然(?)縫い跡は+で、教授がおられた時にはニコニコしていたその方が、二人になると、「腹部、引き攣れて痛いぞ」と私の眼を見据えながら言ってきました。 この当時はこれで終了でしたが、現代だったら・・・・・・・・・。。。
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icelandia at 2008-02-16 14:18
お気づかいを有り難う御座います。子供の傷は8-9年前のものとなり、パっと見には全くわかりません。額の産毛が生えていない部分があるため、そこが傷跡だとわかる程度です。また、帰国直後、地元の美容整形外科医へ連れていき、すぐに傷跡を整形外科的に縫い直していただいた方がいいかを尋ねた際、少なくとも中学生になるまで待つべきとアドバイスをいただきました。これもきっと、適切な助言だったことと思います。
私の腹膜炎の傷跡は5-6年前のもので、真ん中が赤く傷跡だと一目見てわかります。外から見える場所でもないので、こんなものでしょう。痩せ形ですから縫いやすかったことと思います。ご近所の病院です。 患者さんには気の毒でしたが、若い頃そういう体験があったからこそ、その後は人一倍傷のつき具合に対して慎重になられたのではと思います。そういうった体験は貴重ですよね。 ごく普通の病気の手術でも、傷口がきれいに治るよう、整形外科的な縫い方をしていただければと願うところです。傷口よりも病気の方が重大でしょ!と怒られそうですが。
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at 2008-02-16 14:29
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icelandia at 2008-02-16 14:35
あ!縫合エピソードはDoc.Kさんでしたね。先人が体験し、それを後輩にしっかりと伝えるということでしょう。ホント、現代でなくてよかったですね。
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Doc.K
at 2008-02-16 19:41
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そう言われたとき、「傷口よりも病気の方が重大でしょ!」と本当に思ってしまったのです。未熟な私でした。
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n_shioya at 2008-02-16 23:01
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at 2008-02-18 02:10
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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Aya
at 2010-01-17 01:06
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すみません、顔を2cmほど切って腫瘍をとったのですが、抜糸をしたあとの処置について、やはり3カ月ほどテープをしたほうがいいのですね・・。抗生剤入りの薬などもぬったほうがいいのでしょうか?まるで医師には指示されなかったので急に不安になってきました。やはり食べたりすると傷が開きそうでときどきどきっとします。
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n_shioya at 2010-01-17 09:34
Ayaさん:
もう抜糸は済んでいるわけですね。 一週間で傷は一応ふさがり、10日もたてばぶつけでもしない限り、傷が開くことはありません。 テープは傷の保護の意味と傷を多少とも目立たなく治すための補助手段です。 ですから、保護の意味では10日科2週間で十分ですが、圧迫固定して、傷跡を早く目立たなくするという意味では、一月から三月ほど貼っておくこともあります。後者に関しては、絶対必要ということではなく、傷の治り具合で医師が判断します。
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Aya
at 2010-01-18 19:22
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抜糸はすみました。テープの件もご丁寧にアドバイスありがとうございます。少し気持ちが楽になりました(^^)顔なのでやはり後がとても心配で・・・。先生、ありがとうございます!テープで様子をみてみます!
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あき
at 2010-06-17 12:41
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今度、抜糸をするのですが、6月15日に顔の傷を縫ったのですが、
抜糸の日が21日の月曜なのですが、6日後なのでおそいですか??
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こっこ
at 2015-05-04 06:50
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おはようございます。
藁にもすがる思いでコメントさせていただきます。 3歳の娘が、6日前に目尻の横を切り、形成外科で3針ぬいました。 連休を挟むので、抜糸は3日後です。 今朝起きたら、3針縫っている内の真ん中の糸がなくなっています。 このままにして大丈夫でしょうか? 休日診療所を回ったほうがいいでしょうか?
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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