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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
“出る釘は打たれる”と言うのは和を尊ぶわが国の美風であり、“出すぎた釘は打たれない”と豪語した介護業界の風雲児が、あまりにも出すぎたのか、袋叩きにあって一挙に転落したのはまだ記憶に新しい。
だが、アメリカは実力社会で、出る釘でなければ成功を掴みにくい。 どんなにエクセントリックであっても、実力さえあれば世間は許し、認めてくれる。 しかもそのような変わり者は、ことに外科の教授の中には人材が豊富である。 僕がレジデントの頃は、オハイオ大学のゾリンジャー教授が群を抜いていた。 ゾリンジャー・エリソン症候群と言うのを言い出して、一躍有名になった。 彼の変人ぶりのエピソードは数々あるが、其の一つ二つ。 あるとき誰かが彼の駐車スペースに車を停めて置いた。怒り心頭に発した彼は、自分の車を突っ込んで、2台めちゃくちゃにしてしまった。 またあるときは、手術中、助手がもたついていると手を降ろさせ、罰として手術が終わるまで、水を一杯にしたバケツを捧げ持たせたと言う。 ところが、僕は外科の専門医の口頭試問の時、試験官として其のゾリンジャーに当たってしまった。 僕はその日の最後の受験生だった。入室のとき足も顎もがガクカクしていたことは言うまでもない。 ゾリンジャーに一礼をすると、彼は突然ソファーに寝っころがって、“俺はもう疲れた。お前、何か俺に聞いてくれ。”という。 では“ゾリンジャー・エリソン症候群の現状は?”と恐る恐る伺いを立てると、 “アッター ケオス(シッチャカメッチャカだ)。あんなもの、提唱しなければ良かった”。 そんなやり取りが続き、やおら、“日本で桜は何時咲く?”と向こうから聞いてきた。 “四月です”。 “違う、五月だ。お前はアメリカが長すぎて、日本のことを忘れておる”。 “へえ、すみません。おっしゃるとおりです。”と不本意だが降参してやった。 試験官によってはわざと受験生を挑発して、受験生が感情的に食ってかかるのを待ちうけて、落第させるのがいると聞いていたからである。 と言うわけで僕のアメリカの外科の専門医の資格は、このようにいい加減に取得したものであまり自慢はできない。 そのほか外科医に限らずアメリカ人には、いわゆるキャラクターがウジャマンといるのでおいおいご紹介したい。 最近は日本でもまだ少数派だが受け入れられるようになってきた。喜ばしい傾向と僕は思う。
by n_shioya
| 2008-08-23 20:09
| コーヒーブレーク
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Comments(4)
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icelandia at 2008-08-23 21:43
打ったところで引っ込まないし、下手をすると自分がケガをするので、打つ方が諦めてしまうのでしょうね。面白い逸話を有り難う御座います。
私自身も良く言えば個性的、悪く言えば変人なので、個性的な人の中にいる方が楽です。もっと言えば、男尊女卑のヒドイ日本は女性というだけで生きにくい(空気が変わりつつあるのは感じていますし、オバチャンになると生きやすいことが判明しました!=たぶん世間が女性として見なくなるからでしょうね)。 運転をしない私も、実は運転免許を持っています。XX年前にアメリカの高校で取ったもので、縦列駐車に失敗ばかりしたけれど、試験官(顔見知りの先生)がお情けで通してくれました。日本の免許に書き換えましたが、世間の安全のため、遊園地のゴーカート以外では運転しません。どこか抜けていて寛大な、そういうアメリカは好きです。
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n_shioya at 2008-08-23 23:23
icelandiaさん:
“出る釘は打たれる”と言っていながら、“角を矯めて牛を殺すな”という忠告もある。どうしたらいいんでしょうね。 アメリカ人なら、"Dammed if you do, dammed if you don't"と言うところでしょうね。 「変人」の目の輝きに魅せられる僕も「変人」かもしれませんね。 ところで今読んでいる本によれば、アメリカでも女性は二重苦と言うかジレンマをしょっているそうです、女性的という神話の縛りと自己実現の欲求と。 この辺はボーボアールあたりは「第二の性」でどう書いていたか、また読み返します。
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きのこ組
at 2008-08-24 04:15
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n_shioya at 2008-08-24 23:38
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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