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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
白洲正子がこう書いている。
「昔、私の友人が、こういうことをいったのを覚えている。 ――――六十の手習いとは、六十歳に達して、新しくものをはじめることではない。若いときから手がけてきたことを、老年になって、最初からやり直すことをいうのだと。 まだ若かった私は、そんなものかと聞き流していたが、この頃になってしきりに憶い出される。幼いときから親しんだ百人一首について、改めて考える気になったのもその為だ・・云々」 というのが、「私の百人一首」の序文の書き出しである。 確かにアンチエイジングの立場からは、新しいものへの挑戦が強調されるが、まっさらなことをはじめるのも良いが、昔手がけたことを見直し、再生させるのも、効率よく充実感を得ることのできる方法であろう。 それにしても、百人一首とは上手いところに目をつけたものである。 確かに昔の子は、百人一首はほとんどすべて、上の句、下の句、元旦のカルタ会でそらんじるようになったものだ。 だが、大概の句は小学生に意味するところがわかるはずはない。また、本当の意味を子供に聞かれたら親は返答に窮したろう。 だが、60を過ぎて読み返せば、これほど味のある世界はない。僕のクラスメートの耳鼻科の教授だったのが、退官後、百人一首にのめりこんで、教養課程で講義を始めた気持ちもわからぬではない。 アンチエイジングには各人各様の手法があるものだ。 ところで子供時代は、本来の和歌の意味するところはあまりピンと来ず、かえって替え歌のほうがすぐ頭に入るものだった。 たとえば西行の 「心なき身にもあはれは知られけり 鴫たつ沢の秋の夕暮れ」 よりは 「菜のなき膳にあわれは知られけり 鴫焼き茄子の秋の夕暮れ」 のほうがピンと来たものである。 と言っても、“鴫焼き茄子”は僕の大好物だったのでお間違いのないように。 実はこれで失敗したことがある。 姉が新婚早々、旦那と一緒に夕食に呼んでくれた。一日かけてご馳走を用意してくれてた筈だ。 そしてちゃぶ台に“鴫焼き茄子”が運ばれてきた。 スッカリ嬉しくなって、僕は件の替え歌を披露したものである。 姉夫婦がどんな顔をしたか覚えていない。ただ、なぜか一瞬気まずい空気が漂ったような覚えがあり、いまだに思い出すたびに己がオッチョコチョイさ加減に自責の念を覚える。
by n_shioya
| 2008-09-02 20:36
| アンチエイジング
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Comments(4)
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icelandia at 2008-09-03 02:11
母は70代になってからピアノの練習を喜んでやっています。十代にかじっていたので、ゼロからではなく復活組です。私もソナタまでは弾ける(はずな)ので、場所と時間が出来次第、復活予定。手芸(刺繍と編み物)も大好きなので、ここに映画と音楽が入ると、それで手一杯。既に「老後のため」と刺繍セットを買い始めていて、老後は毎日刺繍したりぃ、編み物したりぃ、ピアノ弾いたりぃ、することを思うだけで楽しい!これってプレ・アンチエイジング??
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n_shioya at 2008-09-03 09:21
icelandiaさん:
ピアノと手芸は最高のアンチエイジングです。 音楽と手先を使うことは、共にアンチエイジングの為われわれが最も推奨するところです。 其の効果のメカニズムの解明はこれからの課題ですが。 何事にも準備は大切で、今の場合はもう助走を始めたと考えられたら良いでしょう。 僕にはピアノや手芸はいささか無理そうなので、何かほかの事で代償しなければと思ってます。 本当は手術も頭と手を使うので老化防止にはよいはずですが、アンチエイジングの為に患者さんを犠牲にするのもなんですので、メスは諦めています。
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きのこ組
at 2008-09-03 09:30
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最近は老後が長いので60の手習いはいいアイデアです。私は模索中です。 先生は?
これからナスの季節。。。お姉様にとってもさぞかし”かわいい”(?)弟さんだったのでしょうね。私も、うちのちっと”ぬけた”弟がかわいいです。
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n_shioya at 2008-09-03 23:26
きのこ組さん:
姉についてはあらためて色々書きたいことがあります。 一つだけ言えることは、この科学にだけ凝り固まっていた弟が、少しでも人文的なものに親しむようになったのは、一重にこの姉の存在でした。 僕の六十の手習いは? うむ、僕もいま模索中です。
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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