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NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長が、『アンチエイジングな日々』を
軽快な筆致でつづります。 どうぞお気軽にコメントをお寄せください。 |
またしつっこく高齢者のQOLである。
いま読んでいる「老年学ハンドブック」によると、心理学の中ではベルリン学派とでも呼んでいい一派があるらしい。 その中の一章で彼らが強調しているのは、Sehnsuchtという概念である。 この言葉は通常「憧れ」と訳されており、我々になじみ深いのは、ゲーテのウィウヘルムマイスターでミニオンが歌う「ただ憧れを知る者のみ、Nur wer die Sehnsucht kennt」である。 ドイツ人には特に思い入れの深い言葉のようで、ドイツ語でしかあらわせないニュアンスの言葉の三番目に挙げられている。 このハンドブックは英語本なので、ピッタリではないがとりあえずと断ってLongingという言葉を当てている。 僕には日本語の「憧れ」は十分その意を表わしているように思えるが。 ちなみにドイツ語にしかないとドイツ人が信ずる一番目はGemutlichだったと思う。 そこで老年心理学に戻ると、高齢者の若さを保つ秘訣の一つとして、このSehnsucht,「憧れ」が強調されている。 熱望している反面、絶対手には入らないというあきらめも伴う二重性。これがその本質のようだ。 これまでは若者の特権のように考えられてきた「憧れ」を持ち続けることで、先が見えてきた高齢者が陥りがちな諦念の世界から救い出して、若々しさと生きる原動力を与えてくれるのだということのようである。 この考えにピッタリの詩として、蛇足ながらカールブッセの「山のあなた」の上田敏訳(海潮音)を書き添えることにする。 ”山のあなたの空遠く 「幸(さいはひ)」住むと人のいふ。 噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて、 涙さしぐみ、かへりきぬ 山のあなたになほ遠く 「幸(さいはひ)」住むと人のいふ。” Über den Bergen Karl Busse Über den Bergen weit zu wandern Sagen die Leute, wohnt das Glück. Ach, und ich ging im Schwarme der andern, kam mit verweinten Augen zurück. Über den Bergen weti weti drüben, Sagen die Leute, wohnt das Glück.
by n_shioya
| 2008-10-12 22:13
| アンチエイジング
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Comments(2)
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塩谷信幸
1931年生まれ
東京大学医学部卒業 北里大学名誉教授 北里研究所病院形成外科・美容外科客員部長 AACクリニック銀座 名誉院長 NPO法人アンチエイジングネットワーク理事長 見た目のアンチエイジング研究会代表世話人 東京米軍病院でのインターン修了後、1956年フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバニー大学で外科を学ぶうちに形成外科に魅了される。数年の修業の後、外科および形成外科の専門医の資格を取得。 1964年に帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、1968年より横浜市立大学形成外科講師。1973年より北里大学形成外科教授。 1996年に定年退職後も、国際形成外科学会副理事長、日本美容外科学会理事として、形成外科、美容外科の発展に尽力している。 現在は、北里研究所病院美容医学センター、AACクリニック銀座において診療・研究に従事している。 >>アンチエイジングネットワーク >>NPO法人創傷治癒センター >>医療崩壊 >> 過去のブログはこちら(2005年5月26日~2006年5月26日)
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